第97話 結婚式の夜は
「フェリン」
「ヴァイ殿下!」
声を掛けられ、トイフェリンは振り向いた。
「皆とは話せたか?」
「はい。話したいことは話せました」
「ならよかった」
結婚式も、パーティーも終わって、湯浴みを済ませたトイフェリンはリナと、とある準備をしていた。
「いつも一緒に寝ているのに今日は物凄く緊張する…!」
「今夜はただ一緒に寝るだけじゃないですもんね!」
結婚式の夜といえば、初夜がある。
今日、結婚式で始めて口づけをしたばかりなのに。その日の夜に、更に先までするなんて心の準備がすぐに出来ない。
トイフェリンは緊張で普段通りにいられないのに、リナは待ってましたと言わんばかりに楽しそうだ。
「明日、お嬢様からお話を聞くのが楽しみ過ぎて、私も今夜は眠れないかもしれません!!」
「リ、リナ…。ちゃんと休んでね?」
「お嬢様のお話を聞けば、疲れなんてぶっ飛びますから安心して下さい!」
リナと話をしていたら、緊張が少しほぐれた気がする。すぐに緊張が戻って来てしまいそうだけど。
「ではお嬢様!殿下の居るお部屋へいってらっしゃいませ!!」
満円の笑みでリナが送り出してくれる。
今日は忙しかったはずなのに、まだまだ元気なリナにはびっくりだ。
「いってきます!」
トイフェリンは自室を出て、二人の寝室へと向かった。
部屋にはまだヴァイゼは来ておらず、トイフェリンはベッドへ腰を下ろす。
(今のうちに心を落ち着けよう…)
ヴァイゼが来るまで、深呼吸を繰り返して心を落ち着けた。
しばらくして、部屋の扉が叩かれヴァイゼが入ってくる。
「悪い、待たせたな」
「い、いえ!大丈夫です!」
いつもより薄着なヴァイゼの姿に驚いて、声が少し裏返ってしまった。
ヴァイゼもベッドに腰を下ろし、話始める。
「部屋に入ってきてすぐに…というのはあれだからな。それに、ちゃんと伝えておきたいこともある」
「そうですね」
トイフェリンはヴァイゼの大事な話を、真剣に聞く体制をとる。
「フェリンと結婚が出来て俺は今本当に幸せだ。ありがとう」
「それは…!こちらこそありがとうございます!」
「恋愛や結婚なんて正直面倒だと思っていたが、こんなに幸せな気持ちになるとは思わなかった」
「ヴァイ殿下…」
アオスに行ったのはヘルヘーニルの計画によるものだけど、図書館で出会ったことは偶然だ。
その出会いがなければ、今こんな風に過ごせていなかっただろう。
トイフェリンの恋物語はあそこから始まった。
二人の出会いは運命だったのかもしれない。
「これから先も、幸せなことはたくさん増えていきますよ」
「そうだな」
ヴァイゼは柔らかい表情を浮かべ、トイフェリンに優しい口づけを落とした。
その日の夜、二人は確かめ合って…。
読んで頂きありがとうございました!
本当は初夜を細かく書きたいところですが、年齢制限をかけていないので…。
皆様のご想像にお任せということにしておきます^^