第94話 ついにこの日が
空は雲一つない快晴で、春の日差しが暖かく射している。
今日はトイフェリンとヴァイゼの結婚式。
トイフェリンはリナと共に準備を進めていた。
「今日のお嬢様も世界一可愛いです!!!」
「ふふ、ありがとう」
純白のドレスを身に纏い、アオスの象徴である青色の宝石がついた首飾りをしている。
「ついに結婚式の日なのですね…」
結婚することでトイフェリンは皇太子妃となり、ヴァイゼの妻となる。
嬉しい気持ちが大きいが、やはり緊張や不安も。
準備を終えると、トイフェリンの家族が入ってきた。
「おめでとう。今日のフェリンも一段と綺麗よ。幸せになってね!」
「結婚となると寂しいな…。ちゃんと幸せになるようにな」
「はい!お母様、お父様」
両親は目に涙を浮かべている。
その姿に釣られてトイフェリンも涙を流してしまいそうだ。
「フェリンのドレス姿を見れて嬉しいけど、結婚はやっぱり嫌だよ…。忙しくなっても頻繁に手紙を送ってくれないと、城に乗り込んで連れて帰るよ」
「それはいけません、お兄様」
「うん…。でも、そのくらい寂しい。家名も変わってしまうし」
シュヴェアはかなり寂しいようで、いじけてしまっている。
相変わらずのシスコンだけど、今までで一番落ち込んでいるのがトイフェリンにも分かった。
「家名が変わっても血が繋がっているのですから、この先も繋がりは消えたりしませんよ」
「本当は言いたくないけど、おめでとう」
「ありがとうございます」
そろそろ会場へと向かう前に、トイフェリンには聞きたいことが。
「お母様に聞きたいことがあって、私の名前の由来は何ですか?」
トイフェリンはヘルヘーニルとの一件から、そのことが気にかかっていた。
物語が彼の作り話なら、この名前の由来は何だったのか。
「それは、トイトイトイ!って言いながら両手で握り拳を作って机を叩いたりするおまじないからよ」
「おまじない?」
「頑張ってとか応援の意味が込められていたりするの。元々は魔除けの言葉で、悪魔のトイフェルから来てるとも言われていて。フェリンの名前が呼ばれることで、応援や魔除けになるように、ね?」
「そうだったのですか…」
ようやくちゃんと幼い頃からの謎が解けた。
本当の由来を聞いてとても嬉しく感じるけど、自分のことを思ってつけていてくれていたのに、そう思えずにいた過去を思い出して申し訳ない気持ちがある。
(昔にちゃんと聞いておくべきでした…)
「私は色々誤解していました…、ごめんなさい」
「いいのよ。今日は特別な日なんだから暗い顔は駄目よ!さぁ、行ってらっしゃい!」
「行ってきます!」
そしてトイフェリンは会場へと向かった。
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