番外編 ヘルヘーニルとの過去 後編
しばらくして、部屋にヘルヘーニルが入ってきた。
「身体の方はどう?平気?」
「少し身体が痛いですけど大丈夫です!」
「そっか…ごめんね」
そう言ったヘルヘーニルは、本当に申し訳なさそうな悲しい表情を浮かべている。
ソフィアとの未来の為の計画で必要だったことでも、傷つけてしまったことに気が引けるのだろう。
「謝る必要はないですよ!それより、一緒に居たはずの二人は無事ですか?」
「あぁ、それなら気にしなくて良いよ」
「それは無事…ってこと良いんですか?」
「そうだね…、無事ではあるかな」
ソフィアはヘルヘーニルの答え方に違和感を感じ、警戒心を強める。
「そんなに警戒しないで。ソフィアには絶対何もしないから」
(私には…)
「そろそろ行かなきゃ。ちゃんと安静にしててね。何かあったら外に人が居るから」
「…はい」
ヘルヘーニルは部屋を出る時に笑顔だったが、ソフィアはその笑顔が少し怖いと思ってしまった。
(ここに来てから私が他の人に会うのを避けるようにしているし、見張りも居るなんて…)
どうしてこのような状況になっているのか。
ヘルヘーニルは自分に何を求めているのか。
そんなことを考えて、やっと何か思い出せそうだったのに、急に外が騒がしくなり始めた。
(何だろう?)
気になって部屋の扉を開け外を見てみると、使用人たちが何やら慌てているし、こちらに気づいていない。
(これは逃げるチャンス?!)
ソフィアは部屋を抜け出し、物陰に隠れながら城の外を目指す。
その間、隠れていた時に話をしている騎士がいた。
「外で何かが起きています!牢屋に居る彼はどうしますか?!」
「放っておこう。今はそんな状況じゃない」
(牢屋に人が?まさか…!)
ソフィアは話を盗み聞きして、彼と言われている人物がアルドなのではないかと思った。
(急がなきゃ!)
騎士が出てきた方へと向かい、ソフィアは牢屋へと向かった。
幸いなことに、牢屋の扉の前に人はおらず、鍵も置いたままになっている。
中に入ると、薄暗く臭いも少し鼻につくキツい臭いだ。
奥の方に人影がうっすらと見え、近づいていく。
「アルド殿下!!」
「ソフィア?!君は何もされてない?!大丈夫?」
「私は大丈夫です!ここから早く出ましょう!」
鍵を開け、アルドは牢から解放され、二人は城内へと出る。
城内の明かりでアルドが怪我をしていることに気づいた。
「アルド殿下?!怪我を…!」
「大丈夫、たいしたことないよ」
かなり汚れていて分かりにくいが、服に血が滲んでいる。
ソフィアはヘルヘーニルだと悟ったが、それを口には出さなかった。
城に出てから、一緒に馬車に乗っていた二人が本当に無事だったことに安堵し、今の状況を知った。
それから、ヘルヘーニルとの過去のことも思い出した。
ソフィアは自我を失ったヘルヘーニルを見て思い出したことを考え始める。
(ニルはヘルヘーニル殿下だったのですね…)
幼い頃、街で綺麗な髪と服に珍しく思い声をかけた男の子がいた。
その子はニルと名乗っていた。
身なりでなんとなく分かってしまうが、身分を隠す為だったのだろう。
それを分かった上で、気づかないふりをしてその日はたくさん遊んだ。
その時間は凄く楽しかったし、彼から聞いた固い意思には尊敬の気持ちと応援したい気持ちを向けていた。
彼からは重い愛情を向けられていたが。
(どうして気づかなかったんだろう。髪も瞳も同じ色だったのに)
きっとそれは、ヘルヘーニルの目指すものが変わってしまったことで、昔に会った子だと気づけないほどに執着が人を変えてしまったのだろう。
読んで頂きありがとうございました!
今回のことでアルドはソフィアに恋心を抱き始めます。




