第10話 建国祭へ向けて
夢を見てから三日目、とうとう建国祭の日ががやってきた。
建国祭では国民全員が、エーデルの象徴である赤色の装飾品をつける。
トイフェリンはガーネットの宝石の付いた装飾品を身に着け、皇太子と合わせる為ドレスも赤を基調としたものを着ている。
「お嬢様、今日もとっても可愛いですよ!」
「ありがとう」
リナはいつも褒めてくれる。トイフェリンは恥ずかしいが、ドレスを着るたびにリナが喜んでいる姿はとても微笑ましい。
「それじゃあ、いってくるね!」
「はい!いってらっしゃいませ!!」
リナに見送られ自室を出て、皇宮の外へと向かう。
門を出ると皇太子アルドリックが先に待っていた。
「アルド殿下お待たせ致しました」
「構わないよ。では行こうか」
アルドの手を取り馬車に乗る。
二人だけの馬車の中でも先日のように沈黙が続いていた。
そもそもトイフェリンは自室に籠っている事が多いし、アルドは公務のため忙しく皇宮に居ないことが多く、帰って来てもその頃にはもうトイフェリンは寝てしまっている。
その為二人はあまり頻繁に会話をしていなかった。ちゃんと会話したと言えば、婚約をした時の顔合わせと昨日くらいだろう。
それに久しぶりに昨日アルドと話したというのに、内容が内容だけに少々やっぱり気まずかった。
(今日はとてもおめでたい日なのに、昨日あんな話をしてしまってやっぱり罪悪感が…)
不安と焦りで自分にいっぱいいっぱいで、周りが見えていなかった自分が嫌になり落ち込む。
(本当に私は殿下には相応しくありませんね。聖女様の肩書きも殿下には申し分ないですし、私はただの侯爵令嬢……)
「元気がないね。体調でも悪いのかい?」
「いえ!ちょっと考え過ぎてただけで…!」
「そうか…」
アルドは何か言いたげだったが、悲しそうな顔をして黙ってしまった。
(私が婚約破棄を持ち掛けたことを気にしていらっしゃるのかな…)
アルドが何を考えているのかトイフェリンは気になるが、それは聞かなければ分からない。
でも聞いてしまえばこの先の決断を躊躇ってしまうだろう。
だからトイフェリンはただただアルドに申し訳ない気持ちを募らせるばかりだった。
読んで頂きありがとうございました!
ちょっとしんみりした場面が続いているので、書いてて切なくなってきます…
早く二人とも幸せにしてあげたいです。