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藍色な彼女  作者: 眼鏡氏
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2

「うどんなんですけど良かったです?」

そう言って冷蔵庫を開けた彼女に

「え、あぁ、うん」

となんとも気の抜けた返事をした。

なぜ俺は彼女、宮下藍子の部屋でうどんを作ってもらっているのだろうか。


先程の玄関先でのことだ、扉を開けて出てきたのは前の職場の隣店舗で働いている宮下だった。

彼女が着ている服は毎日のように見ていた黒いポロシャツのおにぎり屋の制服だった。

「お久しぶりです?」

宮下が首を傾げながら言うのも仕方ない。なにせ最後にあったのはたった2ヶ月前のことだ。

「久しぶり」

お互い急なことに驚いていたのだろう、数秒沈黙が続いた。

すると唐突に宮下が

「ご飯食べます?」

と言った。


気づいたら俺はカウンターキッチンのところに座って宮下を見ていた。

彼女は冷蔵庫から出した鍋に火をかけはじめ、ネギ、なめこ、生姜、卵を取り出してきた。

ネギはサッと洗って少し太めの斜め切りに、なめこはザルに開けて水あらい、生姜をすりおろし、卵をお椀に割入れ溶きほぐしていた。

そんなことをしていたら、鍋から暖かい香りがしてきた。

鍋の中身は前もって用意していた出汁だったようだ。

22歳の女の子が丁寧に出汁をとっていることに驚きをかくせない。

でも出汁の香りが、キッチンに立つ宮下によく似合っていた。

宮下は鍋にネギ、なめこ、生姜、調味料をいれ、うどんを冷凍庫から取り出し電子レンジに入れた。

「ちょっと椅子貸してもらっていいです?」

「あ、あぁ」

俺は驚いてしまいすぐに立ちあがった。宮下をじっくりと見ていた事に気づかれてないか少し焦る。

宮下は椅子に昇ってキッチンの上の棚に手を伸ばし、丼を取りだしてきた。

それぐらいの高さ言ってくれれば取ったのにそう思いながら返してもらった椅子にまた座る。

取りだしてきた器を宮下は洗い始めた、そしてキッチンの下の棚から同じ器を取りだした。上の棚から出した器はいつもは使っていない物のようだ。

宮下は鍋に卵を入れていき蓋を閉める。

器にうどんを入れると鍋の中身をその上にかけていった。

器が俺の前に置かれる。完成したようだ

宮下は自分の分を持って俺の隣に来る。

「さっ、食べましょ?宮下お腹ぺこぺこですー」

宮下はふにゃりとした笑顔でそう言って手を合わせた

「ああ、悪いありがと」「「いただきます」」

グレーに紺色の模様の入った器に青いネギと黄色の卵がよく映えている。湯気だつそのうどんは生姜の少しの辛味と卵の柔らかい味で心と身体をときほぐしてくれる様だった。


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