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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

万能無欠の最強賢者 〜悪徳パーティリーダーに辞表を叩きつけた際、「お願いだから辞めないでくれ」と懇願されてももう遅い。新人の頃あんなにパワハラしたくせに最強の冒険者になったら急に手の平返されても……〜

 サンダリア王国の冒険者なら、今や〈黒の不死鳥(ブラックフェニックス)〉の名前を知らぬ者はいないだろう。

 魔王軍幹部の一人を圧倒的な力で捻じ伏せ、王国の危機を救った最強パーティとして注目を集めているのだから。


 〈黒の不死鳥〉は三年前に当時Bランク冒険者だったギルドマスターが発足し、初期メンバーは冒険者学校を卒業してすぐの新人のみ。

 その新人の中には俺、ジーク・シェーンハイトもいた。


 あの頃から思えば、俺たちは随分と成長した。

 しかし、「新人である俺たちを拾って育ててくれたパーティリーダーに感謝しているか?」と問われれば間違いなく首を横に振るしかない。

 だって当然じゃないか——


 ◇


 三年前。


「朝の朝礼だ! 声張れよクズ共!」


「「「「「は、はい——!」」」」」


 午前九時、〈黒の不死鳥〉は毎朝このように冒険者ギルドの前で朝礼がある。

 朝礼に何の意味があるのか? という質問は禁句だ。

 何の意味もない。パーティリーダーであるテッドの趣味である。事実、朝からこんなことをしているのは俺たちくらいのもんだ。


「一、私たちは贅沢を言いません!」

「二、私たちは死ぬ気で挑戦し続けます!」

「三、私たちはテッド様に逆らいません!」

「四、私たちはパーティの歯車です!」

「五、私たちは報酬よりも成長を重視します!」


 このようなスローガンを一人ずつ順番に言わされるのである。

 ……朝から気分が滅入っていた。


 テッドの口癖は「てめえらの代わりなんていくらでもいる! 辞めたきゃ辞めろ! 三年保たずにクズに次のパーティなんざ見つかるわけねえがな!」だった。


 冒険者学校を卒業した冒険者の卵は皆が揃ってどこか既存の冒険者パーティに所属するのが通例となっている。

 そこで三年間力をつけて今後も入ったパーティで続けるか、転職するか、独立するかは当人次第。


 しかしテッドの言うとおり、三年間を待たずにパーティの解散以外で辞めた冒険者が転職で待遇の良い成長できるパーティに所属するのは困難を極める。

 冒険者としての経歴に傷がつくと厄介なことになってしまうのだ。


 稀に優秀な冒険者はソロで活動していたりもするが、基本的にパーティに所属しなければまともに依頼をこなすことは不可能。

 それに、パーティでの活動経験が短い冒険者はなかなか良い依頼が受けられないという事情もある。

 どんなに理不尽でも、過酷でも、待遇が劣悪でも続けざるを得ない。


 これが実力主義、キラキラした冒険者たちの実態である。


 ちなみに、今日は給料日。


 今月の俺たちは命懸けで魔物との死闘を繰り返し、いつもよりたくさんの依頼を達成した。

 数だけでなく、大分俺たちの実力がついたことで、ワンランク上の依頼をこなせた。ギルドからパーティに支払われる報奨金も今月は桁が一つ多い。


 いつも夜にギルドの酒場で報酬の分配が行われるのだが、今日ばかりは俺を含めてパーティメンバー全員が浮き足立っているように感じられた。

 俺たちは基本的に月額固定金額で雇われているが、普段より目立って報酬が多い時には臨時ボーナスが支給されるのが冒険者パーティの慣例になっている。


 もちろん一人当たりは多額の報酬にならないだろうが、いつもより少しでも多めにしてくれるだろうという期待があった。

 何せ、パーティの金というのは俺たちが稼いだ金なのだ。

 分け前をもらえるのは当然である。——この時は、そんな風に考えていた。


「待たせたな、お前らに今から報酬を渡していく」


 テッドが五人分——パーティメンバー全員の麻袋を一人一袋ずつ渡していく。


「ありがとうございますー!」


 と各々がパーティリーダーに感謝の言葉を述べながら、報酬の入った麻袋を受け取っていく。

 全員分が行き届いたところで、給料の確認である。


 仲間とアイコンタクトをとり、一斉に麻袋に手を突っ込んだ。


 いつもなら金貨15枚程度。

 節約すれば何とか冒険者を続けられる程度の報酬だが、今月ばかりは少し多めにあるはず——


「え、金貨5枚……?」


「お、俺もだ……」


「どういうことですかテッド様!」


 全員が困惑していた。

 いつもの月よりパーティに入る収入は明らかに多い。

 しかし報酬はいつもより著しく少ない。しかも全員がとなれば、間違いでは起こるとは思えない。


 明らかにおかしかった。

 俺たちの視線がテッドに集中する。


「いやーすまんね。お前らの報酬を増やそうと頑張ったんだが……負けちまってなぁ……へへ」


「ちょ、それってギャンブルでスったってことですか!?」


 俺は、思わず身を乗り出していた。


「ギャンブルじゃねえ! 投資だよ、投資! いやーすまんねー。来月多めにするから! な? この通り!」


 口では謝るテッドだが、まったく反省しているようには見えなかった。

 反省したところで到底許せることはではないのだが。


 しかし、文句を言っても報酬が上がることはないし、辞めるという選択肢がない俺たちはため息をつくだけでどうすることもできなかった。

 もちろん、その後約束通り報酬が上がることはなかったし、報酬が下がることもたびたび起こった。


 そんな目にあっているうちに、俺たちは一つ約束を交わした。


 苦しい期間は三年。

 三年後に最強の冒険者になって、一斉に全員抜けてやるのだと。パーティリーダーにとって最もダメージが大きい形で辞めるのが一番の復讐になるからと各々が己を言い聞かせることで、日々研鑽を続けたのだった。


 どんな理不尽にも耐え、成長できる依頼を自ら提案したりもした。

 その結果、三年後に〈黒の不死鳥〉は王国中に名を馳せることになる。


 テッドがなにをしたというわけでもない。全部俺たちの力だ。


 ◇


「は、はああああああ!? こ、これはどういうことだ!?」


 俺は一通の封書をパーティリーダーであるテッドに手渡した。

 その封書の中身は、辞表。


 パーティを自ら辞める際にはリーダーに提出するという慣例があるので、それに従ったまでである。

 ギルドで手続きすればいつでも辞めることはできるのだが、しきたりというかマナーとして、これを提出するのが半ば決まりのようになっている。


「見ての通り、辞表です。今日限りで俺はパーティを辞めさせてもらいます」


「な、何でだよ! 俺のなにが不満なんだ! なんか言えよ!」


「強いて言えば、全部ですかね。ずっと前から今日でパーティを辞めようと考えていました」


「報酬ならこの前上げてやっただろ! い、いやさらに上乗せしてもいい、それでいいんだろ!?」


「金の問題じゃない。……そんなもので俺の意思は揺るがないんだ」


「クソが! 育ててもらった恩を忘れやがったのか! この薄情者が!」


「なんとでも言えばいい。これからどうするのか知らないが、ギルドに悪徳パーティリーダーとして報告させてもらうから覚悟しておけ」


 口論が白熱し、一応はまだパーティメンバーであるにもかかわらず言葉が汚くなってしまっていた。

 まあ、今後関わることもないだろうしこれでいいだろう。


 ちなみに、悪徳パーティリーダーであることを報告すると今後の採用活動が非常にやりづらくなってしまう。

 完全にできなくなるわけではないのだが、『ブラックパーティーです』と宣言する形で応募する者はいないだろう。


「俺が悪徳だとォ!? 舐めた口利きやがって……。覚えていやがれ、俺の持ち駒はまだあるんだ! 徹底的に攻撃してお前の邪魔をしてやるから覚悟しておけ! この国でまともに冒険者やれると思うなよ!」


「持ち駒? いったいアンタは何を言ってるんだ?」


「目が腐ったか? そこにいるだろう、お前の代わり。反抗する駒なんぞいらん!」


 ドヤ顔で宣うテッドだが、まだ気付いていないらしい。

 確かに俺は辞表を提出したが、他にも提出する者がいないなんて言ってないんだが……。


「俺も辞めさせてもらう」


「俺もだ」


「もううんざりだ。これ、受け取れよ」


「やっと、この日が来たか」


 一斉に俺の他の四人が辞表を手渡す——というより、投げつけた。

 コツンコツンと次々テッドに当たり、足元に落ちていく。


「な、な、な、なんだとおおおお!? て、てめえら……!」


 テッドは顔を真っ赤にして、プルプルと震えていた。


「認めん……。こんなもの、絶対に受け取らんぞ! 絶対に辞めさせん! どんな手を使ってもな!」


「アンタが何を言おうと勝手だが、パーティメンバーである俺たちにも保証された権利——離脱権は絶対に侵害できない。拘束する自由なんかねえんだよ。そっちが受け取らないってんなら、無理やり抜けるまでだ」


「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ……」


 悔しそうに拳を握りしめるテッド。


 しかしこいつの自業自得である。

 俺が何か悪いことをしたわけでもない。

 パーティメンバーとして当たり前に持つ権利をたまたま五人一斉に行使したに過ぎない。


「ジーク、やっと終わったな」


「ああ、やっとな」


 ずっと一緒に高みを目指し続けた大切な仲間——文字通りの意味で戦友たちとハイタッチを交わしたのだった。


「これから、お互い頑張ろうぜ」


「もちろんだ」


 テッドのパーティから抜け、俺たち五人で新たなパーティを結成すればそのまま順当に更なる高みを目指せるだろう。

 だが、それはしない。


 別れは惜しいが、それぞれが独立しパーティを結成する。

 そして、それぞれがライバルとしてこれからは競っていこうと話し合いで決めていた。


 三年前から決めていたことだから、今更何か言うつもりはない。

 それに冒険者を続けていればそのうちまた会うこともあるだろう。

 永遠の別れということでもない。


「今日は皆の独立記念に、パーっと飲みにいこうぜ。ジークも当然くるよな?」


「当たり前だ。そのために今日まで頑張ってきたんだぞ? 今日の一夜のためにな。最高の酒が飲めそうだ」


「さすがはジークだ! そうこなくちゃな!」


 俺たちがわちゃわちゃと盛り上がっていると、テッドは力ない声で俺の肩を掴んだ。


「お、お願いだから辞めないでくれ……なんでもする、なんでもするから……」


 今にも泣き出しそうな——いや、既に泣いていた。

 そういえば、最強のマネジメントがどうとか息巻いてたっけ。

 これからどうしていくのか知らないが、俺にはどうでもいいことだ。


 俺はテッドの手を振り払い、冷たく言い放つ。


「一度決めたことだ。今更何を言われてももう遅い」


 ◇


 大切な仲間たちとの独立記念パーティを終えて、次の日。

 最高の気分で村の外へ冒険に出ていた。


 俺は〈黒の不死鳥〉時代に剣と攻撃魔法を徹底的に鍛え上げ、メインアタッカーとして活躍していた。そんなことをしているうちに、〈賢者〉なんて呼ばれてたっけ。

 今の俺はどこかのパーティに所属せずともソロでSランク任務だってこなすことができる。


 まあ、仲間たちとの約束を守るパーティを結成しないといけないんだが……しばらくはソロで気ままに生活するというのも悪くないとも考えていた。

 これから長年付き添うことになるパーティメンバーを雑に選びたくはない。


 良い出会いさえあればすぐにでも誘うのだが、そんな簡単に見つかれば苦労はないのである。


「——よっと」


 道中の雑魚敵を〈誘導火炎弾〉で薙ぎ払って目的の狩場へ足を進めていく。

 俺が認知した瞬間に火炎弾が飛んでいき、襲いかかってくる前に魔物は絶命した。


 狩場を荒らしと揶揄されることもあるが、高ランク冒険者にとっては効率よく移動しないと時間がもったいない。

 ソロになったからと言ってすぐに変わることはない。


 いつもの調子で進んでいき、あと10分くらいかな? と思っていた時だった。


「誰か戦ってるのか……」


 道中で金髪碧眼の美少女が一人で魔物と戦っていた。

 腰まで伸びる艶やかな長髪、高級果実のように膨らんだ胸、にもかかわらず華奢な肢体。


 かなり若く、年齢は俺より一回り若いといった感じだった。

 多分、16歳くらいだろうか。


 相手にしている魔物はゴブリン。緑色が特徴的な恐ろしい顔をした妖精だ。

 しかし不思議なのは、周りに仲間の冒険者がいないことだった。


 あの歳でソロ冒険者とはな……。


 俺も先を急いでいるし、邪魔するのはあれなのでさっさと迂回すれば良かったのだが、俺は少女の戦いぶりに見入っていた。


「素晴らしいセンスだ」


 つい、一人で呟いてしまう。


 ゴブリン相手に苦戦しているのだから戦闘力としてはまだまだ低いし、剣の扱いも身のこなしも洗練されていない。

 だが、俺も通ってきた道だけに彼女には光るセンスがあった。


 ——磨けば、光る。


 一目で確信をもったから、見入ってしまっていた。


「きゃっ……なんで!?」


 俺の視線に驚いて——ではなく、少女が熱中して戦っているうちに複数のゴブリンに絡まれたことで動揺しているようだった。

 チームプレイなら複数の敵への対処は比較的簡単だが、ソロとなるとなかなか難しい。


 ゴブリンが三体同時に襲いかかる。

 しかし機転を利かせ、後ろに下がってそのままゴブリンの背後に腰を捻る。そして、剣を一閃。


 咄嗟の対応もさすがとしか言いようがない。

 自身の実力を正確に把握し、その枠組みの中で最善手を選ぶ……というのは簡単なようでなかなか難しい。人は間違えるものだし、一瞬の判断となれば尚更だ。


「……でも、ダメだな」


 俺は冷静に判断を下し、迷うことなく地を蹴った。

 その次の瞬間、足音を殺して後ろに迫っていた五体のゴブリンが少女に襲い掛かった。


 少女にとっては突然現れたであろう五体のゴブリン。

 一体倒したから、残り七体。


 さすがにキャパオーバーだと悟っただろう。撤退しようとするが、もう遅い。

 普通ならここで若い命……素晴らしい才能が失われていたことだろう。


 だが、そうはさせない。


 俺は少女の前に颯爽と現れ、アイテムスロットから剣を取り出した。

 アイテムスロットというのは、異空間収納魔法を俺が独自進化させたものだ。


 どちらも異空間にアイテムを収納することのできる魔法だが、発動にかかる時間が全く異なる。

 異空間収納魔法は魔法陣を描き、予め設定した起動呪文を詠唱する必要がある。


 俺はそれを改良することで魔法陣と呪文を省き、シームレスにどのタイミングでもアイテムを取り出したり、逆に収納できるようになった。

 それが最強冒険者と言われる理由の一つでもあるのだが……今はそんなことを思い出している場合じゃない。


「一人でどうにかしようとしていたところ悪いが、ちょっと手を貸すぞ。どうせなら目に焼き付けておくと良い」


「え? 誰ですか!?」


 新しいゴブリンが現れたこと以上に驚きを隠せない少女。

 しかし、悠長に説明している余裕はない。


 俺はあえて魔法で一撃で吹き飛ばすことはせず、華麗に剣を舞った。

 サクサクサクサク——


 と次々ゴブリンたちを斬っていき、刹那の間にピンチを救ったのだった。


 剣で斬った後、ゴブリンの死体は綺麗に上に積まれていき、塔のような形になった。

 これはもちろんたまたまではない。


 普通に倒しても面白くないので、サービスとしてパフォーマンスして見せたのである。


「す、すごい……! あっ、じゃなくてありがとうございます。本当に……助かりました」


 口を開けてただ驚いている少女だったが、我に返ったタイミングで深々と俺に頭を下げてきた。

 この子は自分の実力を正確に把握できている。


 だから、さっきのピンチは完全に自分のキャパを超えていることを悟っていたのだろう。

 逃げても、逃げきれない。


 それがわかっていたから、素直に感謝の言葉が出たのだ。

 俺はそこも含めて改めて評価を上げていた。


「どういたしまして。ソロで活動してるのか?」


「はい。あっ、私……リーリャ・ビストイアと言います。前はパーティに入っていたんですが、ちょっと色々あって……」


「なるほどな。気持ちはよくわかるよ。俺はジーク・シェーンハイト。昨日でパーティを辞めて今はソロで冒険者をやってるんだ」


「ジークさん……いえ、ジーク様って、もしかして〈黒の不死鳥〉の!? え、辞めたってどういうことですか!?」


 俺の名前を聞いた途端、さっき俺が登場した時よりも驚くリーリャ。

 確かに俺はそこそこの有名人だという自負はあるのだが、まさかここまで名前が通っているとはな……。


 逆にこちらが驚いてしまうくらいだった。

 そして、やはりというべきか俺の名前は〈黒の不死鳥〉とセットで覚えられていた。


 リーダー以外のパーティに所属する冒険者の宿命ではあるが、少し前のパーティの名前を出されることには抵抗がある。


「もともと辞めるつもりだったんだ。いずれわかることだから言ってしまうが、昨日で〈黒の不死鳥〉のパーティメンバー全員……五人は一斉に辞めた。これからは各々が活動して行こうってな」


「ま、まさかそんなことが……色々とあるんですね。あんなに勢いのあるパーティでも……」


「まあな。ところで、差し支えなければでいいんだが、リーリャはパーティに入りたいって気持ちはあるのか?」


「あると言えばありますけど……無理だと思います。三年経たず……どころか、一年も経たずに辞めてしまったので」


「そうか、良かった」


「え?」


 リーリャがパーティを辞めたことにどんな理由があったのかわからない。

 でも、少なくとも彼女の能力不足というわけではなさそうだ。


 半年で辞めたというのにそこで腐らずに自ら成長を求めて強くなっていった。

 まだ殻を破れてはいないが、磨けば光るセンスを持っている。


 まさか、こんなに早く見つかるとはな、逸材ってやつが。

 俺は思わず、笑みがこぼれてしまう。


「リーリャさえ良ければ、俺のパーティに入ってくれないか? 初期メンバーとして」


 ◇


 その頃、〈黒の不死鳥〉のパーティリーダーであるテッドは、盗賊のアジトで密会していた。

 相手は、盗賊パーティ〈黒血同盟〉のリーダー、ガルロ。


 〈黒血同盟〉は盗賊パーティの皮を被っているが、実態はなんでも屋。

 特に強力なメンバーを抱えると噂されるガルロのもとには、暗殺依頼が舞い込むことも少なくない。


「それで、殺るのはこの五人でいいのか?」


「あ、ああ……それでいい。それで頼む。俺からの依頼だとはバレないように頼むぞ」


「迷惑かけた元パーティメンバーが揃ってぶっ殺されるとなりゃ衛兵も動かざるを得ないだろうな」


「そこをなんとか……な?」


「安心しろ。テッドよ、貴様はついてるぞ。俺たちも色々ネタ持ってるもんでな。いざとなりゃ王国に圧力かけてやるよ。国からの命令とあれば衛兵も退くしかねえからな」


「は、はは……ありがてえ」


「もちろん、そうなった時は追加の謝礼期待してるぞ」


「え?」


「何で意外そうな顔してるんだ? 当たり前だろ。タダで貴様の尻拭いをしてやる義理はねえぞ」


「い、いくら払えばいい?」


 テッドは浪費家ではあるが、ジークたち五人のパーティメンバーが築いた財産がまだまだ残っている。

 とんでもない金額でなければ払えるのだが、追加料金がかかるという話は聞いていなかった。


 今になって心配になってきたのだった。


「さあな。ケースバイケースってやつだ。ということでヨロシク」


「あ、あっ……やっぱりキャンセルとか……」


「聞いちまった以上はどこかで言いふらすかも知れねえなぁ? その上まさかターゲットが死ぬようなことがあれば証人になってるかもしれねえぞ?」


「ひ、ひいいい……」


「ここに来たってことはわかってんだろ? 俺たちに関わった時点で二度と裏社会から抜け出せねえってなぁ?」


「え、それは知ら……」


「——知らなかったはずがねえようなあ。ほんじゃ、今後とも末長くヨロシク。ターゲットのことは全部任せろ。上手く処理してやるよ。報酬は前金半額、成功報酬半額。忘れんなよ。さーて、まずはジークってやつから狙うか」


「あ、ああ……もちろんだ。よろしく……」


 力なく答えるテッド。

 ここで退いておけばよかったのだが、この後テッドの悩みは深刻なことになってしまう。


 この時のテッドはまだ知らなかった。

 想像以上に元パーティメンバーは手強い存在であったことを。

 〈黒血同盟〉の活動により依頼人の正体が簡単にバレてしまうことを。

 悩みに髪が耐えかね、ハゲ上がってしまうことを——

連載候補短編です!


最後までお読みいただきありがとうございます。


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また、『俺だけ無敵の白金獣魔師プラチナテイマー』という作品も連載しておりますのでこちらもよろしくお願いいたします!

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