099.光と闇
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「ーーーーー闇魔法の存在が分かったの。」
その言葉に室内はシンッ...と静まり返り、時計の長針がカチッと動いた音だけが響いた。
ヘンリーは背中から嫌な汗が出てくるのを感じた。じっとりと背中に衣が張り付く。
そして、光の魔法を見た後からの胸騒ぎの原因は、これだと確信した。光の魔法があるならば、その対抗である"闇の魔法"が存在しない方がおかしいーーーーー。
薄々感づいてはいたが、確信などしたくはなかったのだ。ようやくアンが自らの意思で目覚めたのだ。何の憂いもなく皆でゆっくりと祝いたかった。
闇の魔法など、光の魔法以上に文献に残っていない。ほんの僅かに王家の歴史の書物に出てくる程度だった。
違う、残さないことを徹底されていたのだ。
驚愕の言葉に息が詰まりそうになり、ヘンリーは辿々しく尋ねた。
「何故、存在する、とーーーーー?」
絶対に聞かれると分かっていた質問だが、オリビアは答えるのを一瞬躊躇った。
それでも避けては通れない。
「アンの父親こそが、
ーーーーー闇の魔法使いなのでしょう。」
オリビアは足元に視線を落としてポツリと語った。
「気が付かなかったの...アンが4歳になるまで。でも、あの日気付いてしまった。それから15年、今日まで闇に落ちていたの...。」
オリビアは苦々しく、自身を両手で抱きしめるようにして語り始めた。アンがそっとオリビアの肩を支えるように寄り添った。
「星屑の魔法は、私が授けられたのではありません。これは、光の精霊様からアンのための誕生祝いに授けて下さったものです。
それからもう2つ、光の精霊様に頂いたものがあるの。
1つが、アンを守る為に私にかけられた魔法。アンの命の危険を、私が感知できること。」
ヘンリーは、オリビアの意識が回復した原因にようやく納得がいった。アンの命の灯火が消えかけていたその時、光魔法がオリビアを無理矢理にでもアンのもとへ突き動かしたのだろう。
その話はアーサーとエレンは王都に来るまでに聞いていた話と同じだった。
だか、それ以外に闇魔法の話など出ていない。
ふと、
何故あのような男とオリビアが惹かれあってしまったのかは理解できた気がした。
光魔法のほんの僅かな素質を持っているのはやはりオリビア自身で間違いないのだろう。ただし、それに見合うだけの魔力は無いが。
光と闇ーーーーー。
互いが無ければ存在できないものだ。
闇あるところに光あり。
光あるところに闇あり。
それぞれが濃ければ濃い程に互いの存在を浮き彫りにする。依存、なくてはならない関係だ。
あの男とオリビアが、どうしようも無く惹かれあってしまった原因はそこにあったのではないだろうか。
そう、アーサーとエレンは考えた。
「私が4歳の時...お母さんが倒れた日。」
ふとアンがポツリポツリと記憶を話し始めた。本人にとってはあまり思い出したくない思い出なのだろう。アンは眉間に皺を寄せ、見えない何かと闘うような面持ちで話す。
「私、父さんに遊んでほしくて作業部屋に入ったの。...何か重そうなものを持っていたから、手伝うつもりで父さんの手に触れたわ。
そしたら...。」
アーサーとエレンは、4歳のアンが泣きじゃくってあの男の部屋から出てきたところを思い出した。
あの時アンは、父親が静電気に怒ったのだと言っていた。
だが、アーサーは嫌でもその後の真相に想像がつき、拳がワナワナと怒りで震えた。心臓が早鐘のように音を立てる。
「強い光が父さんの手を弾いたの。その時吹き飛ばされたのは、本当は私じゃないの。父さんなの。
父さんは何か酷くショックを受けたような顔をした後、私に怒りの感情を向けたのだと思う。でも、何も言わずに持っていた荷物だけ持ってそのまま出て行ったわ。」
アンは幼いながらに、何故かこの話を真実のままに他の人に話しては家族が崩壊すると感じていた。現実には話さなくとも崩壊に向かったのだがーーーーー。
そこまでアンが話すと、続きはオリビアが補足した。
「ここで恐らく関係してきたのが、もう一つアンが光の精霊様から頂いた加護。光魔法のプロテクションです。闇魔法にしか、効果はないものです。」
聞きたくなかったとばかりに、ヘンリーは膝に両肘をついて両手で前髪を掻き上げ、頭を覆った。それは、想定される最悪のパターンだった。
「闇魔法を使おうとしていた、または使ったところにアンが触れた。その為に光魔法に弾かれたということか。すると、その父親の反応からして不発に終わった可能性が高いな...。荷物、というのは闇魔法の対象物あるいは対価のどちらかだろう...。」
闇魔法の存在の確定
および
闇の魔法使いの存在の確定
闇魔法も、結局は魔法使いの力量次第である。平凡な者であれば、それほど大きな事はできない。暗くしたり、瑣末な呪いをかけたり。
だが一番の問題は、闇魔法による"結果"ではない。
皆が闇魔法の存在を危惧したのは、一度でも使おうとすれば、それなりの"対価"がいるところにある。
王家にある魔法関連の書物を全て頭に入れているヘンリーは、過去のほんの僅かな文献から、その対価が何か想定はできていた。
闇魔法について詳しくは知らないアンも、どことなく大人達の雰囲気からそれが恐るべきものなのだろうという想像が付いた。
誰一人口を開こうとしない重々しい空気に、次に父に会う時は悲しい結末以外はあり得ないのだた悟らざるを得なかった。
ようやく100話近くなって、1話から書きたかったことを書くことができました〜!(パチパチパチパチ)
長かったな...笑




