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魔法の紅茶専門店  作者: ミイ
97/139

097.無数の光



「綺麗...」


アンの瞳に無数の光が映り込み、薄く開いた唇から声が漏れ出た。





「アン!!!」


「アン...?聞こえる!?」


「アン!分かる!?」


「アン!!」


皆が目を丸くしてアンを覗き込み、口々に名前を呼び始めた。



「アン!お母さんよ...?聴こえる?見える?星屑の魔法をもう一度あなたに見せてあげたいの...!あなたを15年分、愛したいの...!!」



オリビアはアンの頭から頬を必死に撫でながら、一生懸命に声をかける。



アンは涙が溢れるままに頷き、久方ぶりの母のぬくもりを感じた。



アンはずっと夢を見ていたような気がした。どんな夢かを思い出す事は出来なかった。アンの夢はループ368回目にして、ようやく途切れた。


オリビアの声で目が覚めなければ、アンの身体の限界は、394回目ですべての活動を停止していた筈だった。


後ろにいたクロエやテディは嬉しさを噛み締めるように互いに抱きしめあった。ノエルも今すぐにでもアンに抱きつきたい思いをグッと堪えて、ノワールにしがみついて興奮を抑え込んだ。


グレイソンはひとり膝から崩れ落ち、ただただ呆然とその光景を眺めていた。その目にはとめどなく涙が溢れている。


マークは星屑の魔法と皆の表情を眺めながら、

「良い魔法だ...」

とニカッと笑って呟いた。


「光の魔法...実在したのか...。」

国王が呟く。


「その存在自体は文献にありますが、具体的な魔法の中身も、発現者の記録もありません。」

ヘンリーが国王に返事をする。


「あれはーーーーー


殆ど魔力など持たない人間だった。」


アーサーは泣き崩れるエレンを腕に抱き、愛おしそうに光を眺めながら言った。再びこの魔法を見られた事の幸せを目に焼き付ける。







「お母さん...!お母さん...!!」


アンはゆっくり起き上がると、母を抱きしめ、掠れる声で何度も何度も母を呼び続けた。


「そうよ...お母さんよ...!アン、頑張ったわね、ずっとずっと辛かったわね...!ごめんね...!!!」


オリビアもアンを何度も呼び、その頭を撫で、抱きしめ続けた。




今日は水をさすべきではないだろうと、1番に部屋から出たのは、意外にもグレイソンだった。


アンに対して最も並々ならぬ想いを抱く彼だからこそ、最もアンの気持ちを汲んでいたとも言える。


そして、皆が黙って続き、広い広いその部屋には家族4人と風の精霊達だけが残った。








ヘンリーは考えた。


"あれはーーーーー殆ど魔力など持たない人間だった。"


そう言ったアーサーの言葉に、何か引っ掛かりを感じた。


魔法を使えるようになる条件を全て頭から思い出してみる。


何か、まだ輪郭も掴む事のできない何かが引っかかり、ザワザワと本能的に不安に囚われた。


確かめねばなるまい、と緩みかけた気を引き締めた。


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