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魔法の紅茶専門店  作者: ミイ
85/139

085.そして目を瞑る

区切りの都合上かなり短いです。



アンが驚いて動けずにいると、グレイソンの心臓の音が背中越しに伝わってきた。



気を利かせたのか、扉近くに待機していた侍女達は黙って部屋から出て行ってしまった。侍女達が歩いた時の布の擦れる音だけがして、その後パタンとドアが閉まった。



それから、数分の間。


グレイソンは何も言わずにただただ抱きしめるばかりだった。何か悲痛なその様子に、はじめは驚いたアンも黙ってグレイソンが言葉を発するのを待った。


(今、この場で私を抱きしめるのは、騎士としてか友人としてか、それともーーーーー。)

アンはあり得ないとばかりに小さくふるふると頭を横に振る。




「君が......」

グレイソンの声がかすれた。




アンはグレイソンの鼓動を感じながら、ギュッと目を瞑る。グレイソンは、アンのサラリとした髪に顎を埋め、アンの細い肩を優しくもう一度抱きしめ引き寄せた。



掠れた声と、耳元にかかる吐息がアンの心をざわつかせる。抱きしめられた背中が熱い。



「だ、団長...さん...?」

思い切ってアンはグレイソンを呼ぶ。


「君が意識を失った時...。私は、目の前から光が消えてしまうような気がした。頼むから...もう、無茶だけはしないでくれ...!」


悲痛な叫びに似た声に、アンはグレイソンへと振り返った。グレイソンの手が、冷たい。思わずアンはグレイソンの片手をあたためるように握る。こんなにもこの人は私を心配してくれていたのだと、その時はじめて理解する。





グレイソンの透き通った瞳は





悲哀に満ちゆらゆらと揺れていた。

アンはグレイソンのその瞳から、目を逸らす事ができなくなる。






「ごめん...なさい...。」


小さな、それこそアン自身も聞こえないような小さな声で謝った。こんな優しい人を巻き込んで、悲しい目をさせてしまった。


アンは、その大きな瞳を潤ませて悲しそうにグレイソンを見上げる。


グレイソンは悲しそうな顔のまま微笑み、既にとても近いのに、更に一歩アンの方へと近寄った。グレイソンが少し下を向けば、アンの額に唇が触れるような距離である。


グレイソンはアンの美しい髪を掬った。グレイソンの指先が耳元を掠めたその感覚に、アンは首筋がゾクッとして顔が熱くなる。


グレイソンのその揺れる宝石のような瞳から、ますますアンは目を逸らす事ができなくなる。


何か言おうと唇が動くも、上手く言葉は出てこない。


グレイソンはそのままアンの髪に口付けを落とし、流れるような動作でそのままアンの顎に触れ、その綺麗な顔を優しく上に向けた。















アンは膝から力が抜けそうになるのを堪えながらも、逆らう事ができずに、そっと目を瞑った。



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