064.とんでもない拾いもの
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「アン、これ...俺に見せた理由ってまさか...。」
「お察しの通りかと思います。本の複写です。」
「...だよな。これ、本屋の生業そのものひっくり返すぞ...。」
「私もそう思います。でも、今までよりも本の数は何百倍、何千倍に増え、上級層・中級層だけではなく下級層にとっても身近なものになるはずです。間違いなく価値のある歴史的な事です。」
アンは教育の重要性を知っていた。読み書きができるかできないかで、就ける職も限られる。下層級で読み書きができる子どもは殆どいない。
「そうだな...。今の全て手で書き写している状態から比べれば爆発的に広がるだろうしな。だが、今の雇用を守る事も大切だぞ。」
ウィルは大きな期待の反面、仲間の複写師や製本業者の生活を憂いた。
「ですので、当面は競合のいない絵本や読み書きの本を子ども達に作ってもらうお仕事や、王宮の文書の複写作業、地図の複写あたりに絞って始めるつもりです。
それでも、その他の本の複写が始まるのは時間の問題だと思います。そうなった時に作家として働くのか、複写師として働くのか、または文字の読み書きを教える教師として働くのかを先んじて皆さんに考えて頂くなど、道は無数にあります。」
「なるほど。幸いにも、本の複写師は王都にしかいない。そこの調整はそう時間のかかるものでもないだろう。むしろ生産性が上がって喜ぶものは多いはずだ。
本自体が存在しない地域も多いから、地方は問題ないだろう。後は本という高級品を持つ事をステータスとしている一部の特権階級が何と言うか...。」
「複写師の方々への調整は、ウィルさんにどうかお力添え頂きたいです。ですが、特権階級の問題も基本的には国王陛下に許可をもらっている事なので、滞りなく進むかと思います。」
アンはニコニコとウィルに説明した。
が、ウィルとジョシュアは"国王陛下"という言葉に目を見開いた。
「「アン、今誰って言った...?」」
「ウィルさんにお力添え頂きたい、という事ですが...ダメですか?」
「それはいい!その後だ!」
「良いんですか!ありがとうございます!!国王陛下も喜びます!」
「「やっぱり...。」」
ジョシュアはウィルの肩をポンっと叩くと、逃げるようにパン屋へ戻って行った。
(ジョシュアめ...!置いていくなよ!!)
ウィルはジョシュアの背中を睨みつけた。
「俺は本当にとんでもない拾いものをしちまったなあ...。」
「?」
アンはなんのことですか?と言うように首を捻った。
「お前のことだよ...。」
ウィルは顔を引き攣らせながら言った。
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