060.決意
"絶対"などないーーーーーー。
それは、アン自身も理解していた。しばらく深刻な方向へと思考が巡り、王宮で傀儡のように動く自分を想像する事もできた。
だが、
アンの金と青が混ざる瞳は、真っ直ぐとグレイソンを見据えた。ぼんやりと、ふわふわした女の子の印象はそこにはなかった。
その鋭い瞳に、グレイソンとセトはゾクッと肌が粟立つのを感じた。
覚悟を決めたように、アンは口を開いた。
「私はーーーーー
救える者は全て救いたいのです。」
アンは段々と自身の力の強さを理解していた。楽しく紅茶専門店を営む間も、グレイソンに魔法付与付きの紅茶を渡した時にも。
考えていた。
18歳の女の子としてではなく、最高位精霊と共にある魔法使いとして、成すべきことを。
これから自分が飲み込まれるであろう運命に対し、逆らうのではなく、いかにその荒波にのまれ漆黒の海に消えゆく事なく、しっかりと波に乗り目指すべき未来へと辿り着くかを。
グレイソンはこの時のアンを、生涯忘れる事ができなくなった。
それは
大きすぎる力を持った運命を
自分自身で切り開かんとする
強く美しい人間の決意の表情だった。
「君は...もう決めていたんだね...。」
グレイソンはアンを見て、憂いを帯びた笑みを向けた。グレイソンの手がアンの頬に触れるーーーそう思ったところで頬をかすめ、ブランと力なくグレイソンの身体の横に戻った。
「はい。」
アンは、自分もきっと同じような顔をしているのだろうと思った。
グレイソンはセトの方へ視線をやると、
「セト、このまま騎士団演習場まで付き合ってくれるか?真剣勝負をしよう。
私とーーーーー
セト、君とだ。」
と言った。
セトは動揺を隠せなかった。それは、騎士団で最も実力のある2人が闘うということだ。互いに手加減などすれば勝負にもならない。だが、本気で挑むとすれば怪我なしでは済むはずがない。
だが、グレイソンは騎士団で最も位が高い。第二騎士団長のグレイソンでも騎士団の中で唯一グレイソンの命だけは絶対だ。
短く返事をすると、先に準備をするためアンに鞄を返して走り演習場に向かった。
グレイソンはセトの背中を見送ると、アンの方へ振り向き跪いた。そして、アンの手を取ると再び口付けを落とした。
「御心のままに。」
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