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魔法の紅茶専門店  作者: ミイ
51/139

051.騎士は頼み込む



ケントが走り去った後、呆然としたアンに後ろからクロエが近付いた。


後ろから、押さえた耳と逆の耳に

「あの可愛い騎士様に、何を囁かれたの?」

と妖艶な雰囲気で囁かれた。



それにもアンは顔を赤くして飛びのいた。

「ヒィッ!?〜〜〜っ!?クロエさん!」


「アン、ど・う・し・た・の?」

クロエは手に持った花でアンの頬を撫でながら聞く。


「な...なんでも...ないんです...。」

アンは俯き、尻窄まりになってしまったと思いつつも返事をした。


クロエは、ふう〜ん?とだけ言ってニヤニヤしながら花屋へ戻って行った。


ウィルはため息をつきつつアンの頭をワシワシとすると、仕事に戻って行った。


(ありゃあ〜、ケントのやつアンの事が気に入っちまったかあ〜?)

と、ウィルにも何となくケントの気持ちが読めていた。


アンはウィルにワシワシとされた髪を少し直すと、自分を落ち着ける為に顔をパシパシと叩き、テディのところへ交代しに戻った。






「あ!アンこれ、2つ注文が入ったよ。1つはもうお出ししてる。もう1つからよろしくね。」

テディは分かりやすくメモをとっていてくれたようで、しっかり引き継ぎをしてくれた。


「テディ、いつもありがとう。お礼にこれ、試作中のマフィンなんだけど良かったら休憩中にでも食べてね。これは魔法付与は無いから安心して。」

と、アンは棚から取り出した味噌バター味のマフィンを渡した。前世での味噌はこの世界にはないので、少し似た材料で作ったものだ。


「へえ...!どんな味だろう?ありがとう、頂きます。」

テディは満面の笑みで受け取った。


アンはそんなテディが可愛くて、ついハグをしてフワフワとした髪をワシャワシャと撫でる。最近とても仲良くなったこの2人では、これが通常のことであった。


が、アンにもしっかりと男性ファンが増えてきている昨今、周辺の空気がドンと重い空気に変わっていたことにアンは気付いていなかった。





ジャスパーだけがその空気を気にすることなく、魔道具の作成に夢中になっていた。





...




タッタッ...と軽やかに大通りを走る騎士を、通り過ぎる人々は横目で見る。



「ハァッ...帰りは走る必要なんてなかったけど...。」


ケントは店から数百メートル先から、ようやく歩き始めた。


「グレイソン団長の恩人...魔法使い...どんな人かと思ったら、なんだよあの子...。クソっ。」


ケントは柄にも無いことをしてしまったと今更ながら恥ずかしくなってきた。女性にはそれなりにモテる方だと思うが、初対面でこんなに気になったのははじめてだった。


あの金と青が混ざった瞳に見つめられた途端、頭と体がうまく動かなくなったような気がした。白く細い首筋に、手を伸ばしたくなった。


だが、最近は自身の師匠でもあるグレイソンがご執心との噂もある。それでも、手が動いてしまい慌ててそれらしい事を囁いて逃げ帰ってきた。


「一目惚れとまではいかずとも、また会いたいと思うなんて...。しかも格好つけちゃったし!!何をやっているんだ俺は...!魔法使い相手に同意なく手を出したら不敬罪どころか、精霊様の怒りを買うだろ...!!」


ケントは王宮まで、頭を冷やし、自身の顔を腕で覆いながら歩いた。



...




「おう、ケント早かったな。助かった。」


ケントは騎士団の演習場に戻ると先輩騎士から声をかけられた。


「いえ、それより先輩...まだ護衛騎士あと1人決まっていなかったですよね?」

ケントは真っ直ぐに先輩騎士に向かう。


「ん?あぁ、ひとまずロイにでも頼もうかと... ちょっケント近いぞ。」

先輩騎士は少しケントの両肩を押し戻す。


「俺、その日非番なんで行きます!」

構わずケントはぐいぐい距離を詰める。


「...へ?非番なら休めよ。」


「いえ、防御特化の魔物との戦いに慣れるためにもぜひ!」


「いや、防御特化の魔物は急いで慣れる必要も...」


「行きます!行かせてください!!」

ケントは否定される前に先輩騎士にガバッと頭を下げる。


「あ、はい...。」

先輩騎士はあまりのケントの勢いに、首を傾げながらも担当とすることにした。





この先輩騎士が自分が行けば良かったと後悔するのは、ケントから任務中の様子を聞いた後の事だった。



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