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魔法の紅茶専門店  作者: ミイ
41/139

041.一輪の花


ヘンリーがサッと花だけ買って出て行くと、アンとテディは気まずさに戸惑った。


「アン〜!どういうこと〜!?」

テディは声を顰めつつ、アンに尋ねる。


「え、ヘンリーおじさんたら、で、出て行っちゃったよ!?どうして!?」


アンは戸惑いを隠せなかった。アンは、今日ヘンリーが店に来るということを聞いていたのだ。しかも、花屋の店員の名前を教えろとも言われていた。


だからてっきり、ヘンリーもクロエが気になって店に来たのだと思った。薄々勘づいていたテディは、朝からニヤニヤするアンに事情を聞いていた。



それがどうしてか、ヘンリーは

『女性に贈る花を買いに来た』

と言ったのだ。


これはクロエにとって大ショックなことは想像するにた易い。


「おじさんったら許すまじ...!!今度会ったらけちょんけちょんに文句を言ってやるわ!」

アンは握り拳を作りながら言った。


ヘンリーは何も悪くないとは分かっていながらも、アンはクロエの気持ちを思うと、少しの悪態をつかなければ気が済まなくなっていた。



結局クロエはその日1日、吹っ切ろうとしているのか、空元気に振る舞っていた。周りから見てもそれは明らかだった。それがとても痛々しい。


気丈に振る舞っているからこそ、下手な慰めも良くないだろうと、テディもアンもそっと見守ることにした。



そしてその日、店を最後に閉めたのはクロエだった。こんな日に限って、最後まで客足は絶えなかったのだ。大概の客が、奥さんや彼女への贈り物なのだから、またそれがクロエの傷を(えぐ)った。



クロエはブツブツと皮肉を言いながら店を閉めていた。


「私の店の名前の意味も、()()()()。最悪の皮肉よ。何なのよ。笑えるわ!運命の人に出会ったと思った途端に、こんなに木っ端微塵に散るなんて...。」


その日売れずに限界を迎えた花を、クロエはそっと捨てた。その瞬間、心が粉々になるような感覚を覚えた。


「...あり得ないわよ。いい大人が...恋愛なんかでこんなに子どもみたいに不安定な気持ちになるなんて。客観的に見ても馬鹿げているって...分かってるわよ...。」


クロエは大人だ。きちんと客観的に自分を見ることができる。それでも気丈に振る舞った反動か、涙が数滴(こぼ)れた。




「フンッ!これ以上の涙なんて流さないわよ。」





クロエはそう言うと、零れた涙も拭わずに外に出たのだった。



話の区切り上、少し短くてすみません。


閲覧ユーザー数が1,200overで、感激しています。

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