025.最終調整
どうやらアンは効能が高すぎる紅茶を作ってしまったらしい。
「家で自分で試した時には、漢方とかハーブティー程度の効き目だったのに...」
アンはため息をついた。
「アンちゃんも魔法使いだったんだね〜」
テディがなるほど〜!とうなずく。
「正しくは、魔法使い見習いですが...。」
と、アンは訂正する。
「え、あ、そゆこと!?」
ジョシュアは驚いて皆を見る。
「むにむにゃ...うふふふふ〜」
クロエはまだ眠っている。ジョシュアが丸めた紙でポコッとクロエの頭をたたく。
「ふえっ!?お母さん!?」
クロエがうっすら目を覚ました。ちょっとヨダレが出ているが、隙のある感じがまた可愛い。控えめに言ってもとてつもなく可愛い。
これはこういうものとして、クロエのコアなファン向けに売れるかもしれないなぁ、なんてことをテディは考えていた。かわいい顔してテディはまあまあ腹黒い。
「は!!私ったらどうしてうたた寝を!?」
クロエは顔を赤くしてガバッと起き上がった。ゴシゴシっとヨダレを拭く。
「それにしても、昨日家では大丈夫だったのに、何故これは効きすぎたんだ?」
ウィルはアンに尋ねる。
「すみません...今日私が張り切っていたのを見て、精霊様も張り切ってしまったようで...。私、魔力が強すぎるらしいんです。クロエさん、すみません...!」
アンはうつむいて答える。
「アン〜だめだった〜?」
「ごめんね〜」
「アンの魔力が好きで使いすぎちゃった〜」
精霊達がアンのご機嫌を伺う。そのため可愛いポーズで誤魔化そうとしてくる。
「普段販売するものは効能が高すぎると、色々問題が起きそうです。睡眠や疲労回復などの特殊効果は付かないものに限定したいと思います。」
アンはウィルにそれでいいか相談すると、ウィルも同じ考えらしい。
「ちょっと裏で紅茶の効能を変えてきます。」
アンが紅茶の入った瓶を乗せたお盆を持った。店内にカチャカチャッと瓶同士が軽くぶつかる音が響くが、アンは急いでパン屋のキッチンまで作り直しに行った。
後ろから付いてきた精霊達は、
「とても良い色だけにする〜」
「とても良い香りだけにする〜」
「とても良い味だけにする〜」
と、理解したことを口にしていた。
もう一度アンが茶葉に手をかざすと、精霊達はほんの少しワサワサっと紅茶を混ぜて離れる。
「...よし!皆ありがとう。これでもう一回試飲してもらおう!」
アンはもう一度テラスに戻り、紅茶を配りはじめた。
第2回、試飲会。
「...おっ恐らく普通の紅茶だな。美味しすぎるだけの。」
と言って、ウィルはニヤッと笑った。
「そうね〜この美味しさだけで十分噂にはなるわね。効能の付与なんてあったら、間違いなく王国騎士団でも動くわね。うふふ、美容効果付かないかしら...」
クロエはフフッと笑った。
「よし、明日はこれで通りの人に飲んでもらおう。試飲会だが実際に販売も始める。アンのデビュー戦だな!」
ウィルはアンの背中をトンっと押した。
...ちなみに、ジャスパーは未だアンの紅茶を飲んでいない。むしろ魔道具を使った永久保存の方法を考えているようだった。