表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法の紅茶専門店  作者: ミイ
24/139

024.試飲会

...


その後、引っ越しの荷解きもそこそこに、アンは10種類ほどのオリジナルの紅茶を完成させていた。


しかし、はじめは3種類の紅茶の提供に絞ることにした。実質自分しか飲み物を提供できる人員がいないため、スモールスタートとしたのだ。


試飲会は白亜の本屋のみんなに飲んでもらうのが第一ステップ。第二ステップは、白亜の本屋の前で通りを歩く人に配る。今日はまず第一ステップだ。


アンは店員達に紅茶を配り、少し緊張で震える手を押さえながら感想を待った。


「皆さん、いかがでしょう...?」


「...これは、とても美味しいな。」

ウィルは驚いていた。


「他の皆さんは...い、いかがですか!?」

アンははじめて祖父母や親友のフレデリカ以外に振舞う紅茶に興奮を抑えきれない。


「コレ!シープティー。見た目はと〜っても綺麗ね。鮮やかな紫の茶葉に黄色のお花が咲く紅茶なんて、初めて見たわ!」

クロエは気に入ってくれたようだ。これは祖母がよく出してくれた紅茶だ。ぐっすり眠れる効果があるから、雷がひどい夜なんかに出してくれたものだ。...素材に魔物の肝が入っているのは黙っておこう。


「あああああああああああ!ポートマン様の、麗しきポートマン様のお作りになった聖水ぃいいいいいい!!!」

ジャスパーは何を飲むかは関係ないようだ。アンはもはや気にも留めなくなっていた。感想は無視する。


「あ、こっちの、シンプルなアールグレイ?っていう紅茶が好きだなあ。」


テディは両手でカップを持ち、ほんわかしている。さながら緑茶を飲んでいるような感じだが、アンが前世でのアールグレイを思い出しながら作った紅茶だ。香り高く美味しいが、割と普通。普通だが、風の精霊達が得意な疲労回復系も混ぜてみた。


「うーむ、これは不思議だ...アン、これは紅茶なんだろ?フルーツティーって名前の通り、果物の味がいっぱいするぞ!宝箱みたいだな!」

ジョシュアは意外とキラキラした女子力高い感想を述べてくる。


この王国でのお茶は基本的に、渋みの強いダージリンのようなものしか出回っていない。いろんな味のするフルーツティーがめずらしかったのだろう。そして、目を瞑ると美しい果樹園の風景が目に浮かぶ。だから、景色の良い高台にある果樹園からフルーツを仕入れている。これは、その光景とフルーツの味を楽しむためだけの紅茶だ。


皆がひとしきり試した後、味も見た目も良く問題ないということになった。アンは喜んで片付けと第二ステップの試飲会の準備を始めた。


すると...


「むにゃむにゃ...」


ふとクロエが座っていた席を見ると、机に突っ伏して眠っているではないか。美人が台無しな見事な熟睡ぶりである。


「むにゃ...ぷひゅるるるる...」


「...は?」

ウィルはクロエがこんなに無防備に寝ているところなんて見たことがなかった。控えめに言ってもとても可愛い、と余計な事が頭に浮かぶ。


「余程疲れてた...ってこともありえないですよね?仕事中にこんな寝方する人じゃありませんし。花屋は朝早いから睡眠には気を付けている人でしたし。」

テディは眉をひそめる。


「うーん...なぜだ.....っぅおおおっ!?」

ジョシュアは原因を考えようと目を瞑った瞬間、悲鳴をあげた。


「どうしました!?」

アンは慌てる。


「は!あ、白亜の本屋だ!」

ジョシュアは目を開けると、両手を広げ、なんだか床が抜けるんじゃないかというような間抜けな体勢をとった。


「何やってんだ...?」

ウィルは怪訝そうにジョシュアを見た。


ジョシュアは瞬きをパチパチしながらアンを見た。

「いや、さ。アン、今クロエが寝てる原因を考えようとして目を瞑っただろ?そしたら、足下に果樹園が見えて、遠くに海を見たんだ。オレ、産まれてから一度も絵以外で海なんて見たことないのに、だ。」


すると、精霊達が

「そっかあ〜」

「人間飛べないもんね〜」

「私たちの目線なの〜てへへ〜」

などと後ろで言っている。


要するに、精霊達は果樹園の風景が見える面白効果を付与した際に、自分たちのお気に入りの視点で作ってしまったと。果樹園の真上の高い視点から臨む海は綺麗だ、ということらしい。悪気はないようだ。


「ってことは、シープティーはまさか即効性のある睡眠導入剤になってるってこと!?」

アンはしまった!と思った。


「アンの魔力はね〜」

「強すぎるからね〜」

「そんなこともあるよね〜」


「それと、アン...オレさ、すごーく体が軽いんだよね...?それはもう、大人になってからこんなに調子がいいのは初めてってくらい...。」

テディは不思議そうに言う。


「テディもか、オレも同じ紅茶を飲んだが肩の痛みや腰痛が感じられない...」

ウィルも怪しんでいる。




「ふふふふははははははは!」

やってしまった...と、アンは苦笑いするしかなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ