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魔法の紅茶専門店  作者: ミイ
21/139

021.マシなコーヒーと大混乱


祖母の話を聞いて、アンは先ほどから嫌な予感しかしていなかった。


祖母は着いたばかりなので、アパートで少し休憩するらしい。アンだけ先に走って白亜の本屋に向かう。


すると、嫌な予感が的中していたことは一目瞭然だった。


店の前の通りまで大混乱になっている。まわりの話を聞くと、どうやら「憧れのポートマンの茶器でコーヒーが飲める!むしろ本人が来てる!」ということだった。この大混乱は()わば大繁盛・大混雑ということのようだ。


アンは店から溢れ出た客達に向かって、店員だと説明しながら、なんとか無理やり店に入る。


「おい、()()()コーヒーを一杯くれ!」

パン屋にたどり着いた客が注文をする。


「あいよ!っていうか店主に向かってマズいって言うのはどうなんだ!?今は()()()コーヒーだよ!むしろパン買えよ!」

ジョシュアのそんな軽い返しが聞こえた。豆はどうやら変えたらしい。


アンは人混みを掻き分け、ようやく祖父を見つけると、そこでは臨時サイン会・握手会が開かれていた。本屋の前にテーブルが出されていて、ウィルが大慌てで本を積み上げている。


本には祖父の肖像画が表紙に描かれている。若干美化されている気はする。どうやら本まで出していたようだ...。


更には、余波で花屋にも人が入るようになり、クロエのために我先にと客が花を購入しているところだった。さすがのクロエも引きつった笑顔で接客をしていた。


アンが客を掻き分けるのに手間取っている様子を見て、祖父は少し手を止めて立ち上がった。杖を振り、魔法を使ったのだ。人により魔法の発動方法もまちまちなこの世界で、祖父は杖を使うことを好んでいた。


「やれやれ、これでどうだ...少しはおさまるだろう。」


精霊達が祖父の指示で風による交通整理をしてみせた。客は風に圧されて一線にきちんと整列させられた。


ランドリー屋のテディは慌ててその隙に列整理のためのロープを張っていく。ランドリー屋にはそれほど影響がないので、完全にとばっちりである。


その時、テラス席で「うわっ!?」「なんだこれ!?」「ウソみたい!」という声が聞こえてきた。


どうやらマズいコーヒーが、マシどころかちゃんと美味しくなっていたらしい。客が感動している。


あちこちで色々問題は起きているが、ひとまずアンはウィルに声をかけた。


「ウィルさん!大丈夫ですか!?うちのおじいちゃんがごめんなさい!皿洗いから手伝えばいいですか!?」

結構大きい声で話したつもりだが、ギリギリ聞こえるくらいだった。アンはカバンから白いエプロンを取り出しながらウィルの指示を仰いだ。


「ふっ...ふふふはははははははは!アン、最高だ...!!1ヶ月分の儲けを今日1日で叩き出すぞ...!!いいか、今1番単価が高いのはこの本だ!本の追加を裏から持ってきてくれ!皿洗いはその後だ!!!」

ウィルは金の亡者のような顔つきでアンに指示をした。


「えっと...ウィルさんがいいなら、いいのか...な...??では、すぐに本を持ってきまーす!」

アンは本を取りに裏に走った。



...




1時間後、祖母が合流した。祖母のレシピ本でも同じ事が起こった時にはジョシュアとクロエは涙目だった。テディは最早気配を消す事に決めたようだった。


ウィルは頭の中でチャリンチャリンと鳴り響く金勘定の音しか聞こえていない。



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