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魔法の紅茶専門店  作者: ミイ
138/139

138. 7歳

「あなた達、ヘンリーおじさんに何をしたの!?」


アンは必死の形相で最高位精霊達へと詰め寄る。


「アンとおなじ〜」

「ちょーっとだけつよくした〜」

「ちょーっとだけよ〜」


妖精達はヘンリーの様子をみて、うふうふと笑い声をあげている。


「お姉さん、コレ本当においしい!」

アンがパニックになっているその横でヘンリーは更に紅茶を飲もうとしていた。その様子は明らかに、大人の、現在の彼の所作とはかけ離れたものだった。


宰相として常に表情にも所作にも気を配り、油断も隙もないのがヘンリーの常だった。それが崩れるのはせいぜいクロエの前だけだが、今は屈託のない表情でニコニコとしている。


アンは慌てて紅茶のおかわりをヘンリーから取り上げる。取り上げられたくないヘンリーの手が一瞬空を掴もうとするが、幼い頃から両親から美しい所作を仕込まれていた彼はすぐに諦める。


ヘンリーは取り上げられた事に戸惑いながらも、ギュッと手を握りしめて俯いた。悲しみを隠せていないヘンリーに対し、アンは慌てて言い訳をした。


「あ、突然取り上げてごめんなさいね。この紅茶は今小さな虫が入ってしまったのが見えたの。だから、その、別な紅茶を出すわね!」


途端にヘンリーは笑顔を綻ばせる。

「ありがとうございますっ!」


ヘンリーはアンがお茶を入れる間、アンの後ろをちょこちょことついて回った。


「えぇっと、ヘンリー()()、今いくつなのかな?」


「今?7さいです!」


「そう、そうよね...」アンは大きくため息をついた。


「白タヌちゃん!たすけて!コレの効果を打ち消すことってできないかしら?」


白タヌキは興味なさそうに、尻尾をパタリパタリとするのみで、「ぶにゃん」と言っただけだった。


「時間が解決するとでも?」アンは白タヌキのお腹をタプタプとゆすった。白タヌキはだんまりだ。



「も〜!フウ・プウ・ブウ!まさか精神年齢まで子供にしてしまうなんて、何を考えてるのよ!戻して!!」


「だって〜」

「たのしそうだった〜」

「だった〜」


「戻し方も知ってるんでしょうね!?」


「うん〜」

「あと3ぷん46びょう〜」

「まてばいい〜」


「思ったよりは短いのね...なら待つことにするわ」アンは大きくため息をついた。


その時後ろから大きなカゲの叫び声がした。

「ちょっ!げえええええ!!気持ち悪いいいい!ヘンリーやめろ!!おええええ」


そこではカゲを見つけたヘンリーがカゲをギュッと抱きしめていた。


「わあ!火の精霊さま、かっこいい!はじめて見た〜!」


ヘンリーも本来は18歳の誕生日の前日に初めてカゲと出会っている。だからこそ、こんな喜び方はしなかったし、カゲはぬいぐるみのように扱われ、抱きつかれたことなんてなかった。その上今のヘンリーの姿は大人だ。


カゲが不機嫌になりはじめ、火の粉がチラついている。


「まずいまずいまずい〜!!!ヘンリーおじさま離してあげてー!」

アンは必死で引き剥がしにかかった。ヘンリーの手を引き、ひとまず椅子に座らせた。ふと見ると、机の上にあった一枚のメモ用紙が火の粉で穴が空いていた。



「そこにあるパイ、食べてていいから!ちょっとおとなしくしててね!」アンは急いで作り置きのサツマイモのパイを食べさせはじめた。


「わあ!ありがとうございます。いただきます。」ヘンリーは喜んで少し大きめにパイをフォークでカットし、口いっぱいに頬張った。


3口目を頬張ろうとした瞬間、ヘンリーの表情は一変した。


「...何が起きた。」ヘンリーは赤面して手を振るわせている


カゲは尻尾にくるまって部屋の隅で焦げ臭い匂いをただよわせていた。


風の精霊達はケタケタと笑い転げている。



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