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魔法の紅茶専門店  作者: ミイ
123/139

123.瞳の中の煌めき



...



アンと出会ってからというものルカはいっそう商売に励み、白亜の本屋に入り浸るようになった。ルカが白亜の本屋にほとんど毎週通うようになり、アンはルカが来ればメロメロだった。


「いらっしゃいませ!」

アンが2人を笑顔で出迎えた。


「こんにちは。」

オリーが先に礼儀正しく挨拶する。


「アン姉様今週も来たよ!あとね、えっと、お願いがあるのだけど聞いてくれる...?」


モジモジと後ろ手に何かを隠し持ちながら店に入ってきた。いつもならすぐに抱きついてレオとオリバーが羨ましそうにするのだが、今日は何やら違うようだ。


「お願い?私にできることならば。聞かせて。」

アンはしゃがんでルカと目線を合わせた。


すると、ルカがその目の前にキラキラとしたデザートを差し出す。


「わあ!どうしたの!こんなに綺麗なデザートは初めて見たわ!」


アンは心から驚いてルカとデザートを見比べる。店をやっている身としてはどんな味がするのかとても気になった。


「あのね、植物から青色色素を綺麗に抽出することができたの!だから、冷えたデザートにはちょうど良いと思って。それでせっかくならアン姉様に食べてみてほしいなって。」


ルカはそういってデザートの入ったグラスをアンに手渡すと、サッとオリーの背に隠れてひょっこりと顔だけ出している。


可愛らしいその動きに、アンは抱きしめたい衝動に駆られたが、手にはグラスを持っている上にオリーごと抱きしめる事になってしまうのは申し訳ないのでグッと堪えた。


「ルカちゃん、スゴイわ!これ味見していいの?」


ルカはコクコクと頷く。


アンはスプーンでデザートをつつくと前世のゼリーのような食感がした。ただ、見た目の美しさは宝石のようで人工的とは思えない自然な海のような美しさだった。それこそ七色のデザートだって存在した前世でも、これほどまでに美しいデザートは絶対に存在しないと確信できた。


「本当に美味しい...!清涼感と程よい甘さと美しさ...こんな綺麗なデザートが存在するなんて!ルカちゃん、これ2人で作ったの?」


「あ、いえ、それはルカひとりです。親がいないので料理はルカの得意分野でして。それに、ルカは研究肌なところがあって。」


オリーはフッと笑って答えた。ルカのデザートを褒められて心底嬉しいようだ。


「そうだよ!ルカひとりで秘密基地で一週間も考えてたの!デザートだけじゃなくてね、外灯やランプとか色んな物を売ってるのよ!」


ルカは得意気である。


「外灯?火の魔石の?」


アンが首を傾げた。火の魔石の外灯は、国の事業で一元的に管理されているからだ。ルカの光魔法の外灯は火の魔石の交換も必要がなく長くもつために、少量ながら村を中心に段々と広まっていた。


「違うの!ルカは光の魔法が使えるの。ほら、見てみて!」


ルカは周りをキョロキョロとすると、銀食器をアンの顔の前に差し出した。


「え、なに...?あ!スゴイ!!!さっきのデザートの...!?」


アンは驚愕した。母オリビアの魔法で見た星屑の魔法のような煌めきがアンの瞳に映っていた。金と青の混ざる瞳が、まさに夜空のようにキラキラと煌めいた。


「アン姉様すごく綺麗よ!これすぐ消えちゃうように作ってるけど、それで男の人を見つめたらきっとイチコロだよ!」


ルカはちょっと悪い顔をしてニシシッと笑う。


「ルカちゃんは精霊様が見える魔法使いなの?」


アンはさりげなさを意識しつつも、魔法について尋ねる。


すると、オリーの方が少し嫌そうに顔を歪めてルカに対して首を横に振った。


「兄様!アン姉様にならいいでしょ!ルカは精霊様が見えるほどの魔力は無いよ。下位精霊様の力を借りて魔法を使うくらいなの。」


「そうだったのね。大丈夫。誰かに言いふらしたりしないわ。」


アンは主にオリーに向けて約束する。魔法使いというだけで狙われやすい。オリーは少しほっとした表情をした。


「僕たちは親がいない分、僕が自警団で働きルカが魔道具を売って生活している。だが、魔法使いだと知ると、今までもルカにちょっかいをかけようとする商人などもいた...。だから、黙っていてほしい。」


オリーはルカの頭を撫でながら、苦悶の表情を浮かべた。アン自身、祖父母の店を邪魔したり利用したりしようとしてきた商人を何人も見てきた。親がいないとあれば、それこそつけ込んでくる人間は多いのではないかと考える。


「勿論よ。約束。もしも困ったことがあったら、私が助けにいくわ。」


アンはそう言ってルカと指切りをした。


そして、そのままルカの手を引いてガバッと抱き締める。


「それにしてもルカちゃん!こんなに可愛くてこんなに素晴らしい才能があるなんて、私もう可愛くて可愛くて!!!」


「アン姉様褒めすぎよ!また作って来てもいい?」


「ええ、とっても楽しみにしてる。」


そのまま2人が客として紅茶を楽しむと、暫くしてアンに手を振って店から出た。




アンは見送った後、ふと思い立ったように店の外に飛び出した。




「ねえ、ルカちゃん!このデザートをこのお店で出してみたらどうか...なあ?」


アンの声が通りに響く。



だが、店を出たばかりのはずの2人は既に姿を消していた。



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