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魔法の紅茶専門店  作者: ミイ
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012.新居と少年たち

新居についた。馭者は荷物を下ろすのも手伝ってくれたが、あとはまた村に戻って行った。猫足のバスタブやベランダがついた、パリ風の可愛らしい真っ白なアパートの3階である。


アンはアパートの可愛らしさに感動し、手を組んで祈るポーズをしながら感謝した。

「おじいちゃん、ありがとう!なんて素敵なお家なの!」


「風がよく通る〜」

「風がクルクル〜」

「あ、あの精霊がお隣なのね〜」

精霊達も新居に浮かれているようだ。


この家は、王都に来る前に祖父が手配してくれていた。祖父はどうやら王都には伝手があるとのことで、このアパートを買ってくれていた。アンへの先行投資だと言って聞かず、王都の中心部の中でも一等地にあるこのアパートを選んだのだ。


ただ、アンはとんでもない金額だろうと思い、祖父を止めようとした。すると、「友人だからの、ばあさんの作った紅茶とこの茶器のセットで譲ってくれたわ。」と言ってヒッヒッと笑っていた。


どこにそんな女性向けプレゼントみたいなものと、アパートを交換してくれる人がいるんだ!と思いはしたが、それであればまあ...とアパートの件は何も言わなかった。


アンはやはり、祖父母の作る茶器と紅茶の相場をいまいち分かっていない。


「アン〜!」

「見て〜!」

「捕まえた〜!」


精霊達の声かけに、窓の方を振り返ると、つむじ風の中に何かが捕まっていた。


「白...タヌキ?」


「ぶにゃ!?」

それはタヌキという一言に怒ったように、ジタバタしていた。


「窓枠歩いてた〜!」

「僕らの下位精霊〜!」

「チョコレートクッキーで釣った〜!」


なんだか物騒な事をしでかした気はしたが、ひとまず白タヌキは可愛いので「面倒見るのよ〜」とだけ言って好きにさせておく。


一旦、アンは家には足りないものがたくさんあるので買い出しに出ることにした。フウとプウはまだ新居で白タヌキと遊ぶらしい。ブウだけはアンに付いてきてくれた。


アンはポシェットに財布と鍵だけ入れて出かける準備をする。ポシェットは防犯対策のために、しっかりとチャックを閉める。と、早速アパートの玄関から出てすぐ、10歳くらいの子ども達に囲まれた。




ひとりの男の子が、目の前でアンに向かって、「タイム!タイム!タイム!タイム!タイム!」と拙い言葉で何度も腕時計を指差している。時間が知りたいのかしら?と、その行動の意味がわからないで混乱していると、ブウがアンを呼んだ。


「アン!盗られる!」


アンが振り向くと他の子達がアンのポシェットの紐ごとナイフで切ったところだった。ビックリしてアンが動けずにいると、先ほど腕時計を指差していた男の子の、「逃げろ!」という一言で子ども達が蜘蛛の子を散らすように逃げはじめた。


ブウが風の魔法で阻もうとしたときだった。ひとりの男性が、ポシェットを持った子の手を叩いて落とした。子ども達は失敗したことに舌打ちをしつつも、これ以上のリスクを犯すまいと一目散に逃げていった。



あまりのことに驚きで呆然とするアンに、男性がポシェットを手渡す。


「驚いてるな...お嬢さん王都に来たばかりなのかい?」

男性は苦々しい顔でアンに話しかける。


「...そう...です。小さな子どもがあんなことをするなんて...。」

アンはショックでまだ平常心には戻っていなかった。


「まあ、王都は格差がひどい。あのくらいの事は日常茶飯事だ。孤児か、貧困層の子ども達だろう。」


「そうですか...。


あ!ありがとうございます、助けて頂いて!!」

アンは慌ててお礼を言った。そこで初めてちゃんと助けてくれた男性を見た。


男性は茶色のカールした髪にそばかすの目立つ顔。白いシャツを着て、きちんとした身なりをしていたが、靴は少し煤けていた。年齢は20歳すぎくらいだろうか。


「お嬢さん、どうだい来たばかりということだし、不安なら俺が案内するよ。」


「ありがとうございます、少し怖い思いをしてしまったので心強いです。」

アンはホッとした顔で男性に笑いかけた。


「おう!自己紹介がまだだったな、俺のことはトニーって呼んでくれ。」

男は良い笑顔でニカッと笑った。


「じゃ、早速だが街を回ってみるかい?何か揃えるものなどあるなら、案内するよ!」


「よろしくお願いします、私はアンです。」


「おう、よろしくな!」

トニーは右手を差し出し、2人は握手をした。



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― 新着の感想 ―
[良い点] ほのぼのした雰囲気がとっても素敵ですね〜! 精霊さんたちも可愛くて癒しで、アンも優しくおっとりな所がとてもいい…! まだまだお店開店まで見れてませんが、今後が楽しみな展開です! [一言] …
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