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魔法の紅茶専門店  作者: ミイ
117/139

117.忠誠心の口づけ



ギシギシとベッドが軋む。その音にいやらしさ、淫らな気持ちを掻き立てられないと言ったら嘘になる。その上、膝の裏に這わされたブレイクの指先の動きに身体中が敏感になっていく。



そんなアンの表情を見て、敢えてブレイクは意地悪な笑みを浮かべる。


「ブレイク、ぃやっ!?何するの...!?ねえ!」


アンはどこを見たらいいのか、そして今の状況が分からず、耳まで赤くなり両手で顔を覆う。


すると、


「あっ...!」


ブレイクは目を瞑り、靴を脱がせたアンの右足を持ち上げると、その足の甲に数秒の口付けをした。


普段他人に触れられる事など無い部位なだけに、変に(くすぐ)ったさが腹まで登ってきた。それに反応してアンの脚部から下腹部にクッと力が入ってしまう事が恥ずかしい。捲れそうになるスカートの裾を必死に下げて抵抗する。



(だめ、恥ずかしくて心臓がもたない...!こんなの、ブレイクに気付かれなくない...!)



アンはもう一つ気掛かりなことがあった。部屋の扉は開けたままだったのだ。万が一にも誰かにこんなところを見られてしまったらーーーーーと、アンの頭に金色の髪が過ぎる。



それから予想外の言葉が紡がれた。



「...そして、決して裏切ることなく、欺くことなく、貴方を護る盾となりましょう。」



そう言い終わると、ブレイクはアンの膝裏から手を離す事なく、むしろそれを起点に持ち上げるようにしてアンをベッドに押し倒した。



ドサッという音とギギッと軋む音が同時になる。アンのすらりとした白い脚の間に、ブレイクは左脚を入れて押し倒し、前のめりになっていく。



「い、やっ...!」



ブレイクの中性的な美しい顔立ちで、ゆっくりと目を開け、こちらを見つめる仕草には妙に妖艶さがある。更には手首を押さえ込まれ、段々とブレイクの顔がアンの顔に近付いてきたが抵抗できない。


日々鍛錬に励むブレイクの手を振り解くことなどできるわけもなく、ただその瞳から目が離せないままになる。



ほんの数秒が、とても長い時間に感じられた。



ブレイクの吐息がかかるくらい至近距離で止まったかと思うと、獣のように尖った犬歯を見せて口を開く。そのまま、カプッとアンの鎖骨に甘噛みした。軽く歯があたり舌のザラリとした感触が鎖骨付近にじわりと広がる。そして、僅かに吸い付くように唇で弄んだ後、




「そういうことだ。明日からも訓練よろしくな。」




それだけ言い残してブレイクは起き上がり、部屋の扉を閉めて出て行ってしまった。アンは自分がどんな顔をしていたのだろうと、羞恥で居た堪れなくなった。



先程の足への口付けは"忠誠心"の証。


「どうしてそんな大切なものを私に...。」


アンは真っ赤な顔のままベッドに転がり、まくらに顔を埋める。


だが、その後の鎖骨への口付けとも甘噛みともとれる行為は何だったのか。アンはバクバクとおさまらない心臓の音で思考も纏まらない。


そして、眉間を狭めて口の中で小さく「ブレイクの...ばかっ。」とだけ言った。



...





夜中、窓からアンの部屋に戻ってきた白タヌキは、アンが布団もかけずに倒れ込むように寝ているのを見つけた。


また何かあったのだろうかと思いベッドに飛び乗ると、月明かりに浮かぶアンの顔は晴れ晴れとした表情をしていた。


ホッとした白タヌキは白虎の姿へと変わると、額でアンをベッドの真ん中へと押した。そして、アンを包むように横たわり精霊の言葉で魔法をかける。



『眠る我が愛しき娘を

純粋なる空白の夢の中へ、

暫し安らかな微睡みへと誘え...』



白虎がアンにフゥッと小さく息を吹きかけると、優しい風がさわさわとアンの額を、手足を撫でる。


アンは小動物が冬眠するように小さく身体を丸めると、安心した顔で溶けるように深い深い眠りに落ちた。


それを見た白虎は満足したように、眠りについた。


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