116.誓い、誓い、誓い
「もうガキじゃないんだな...。お前は忘れてしまえばいい。」
と言ってブレイクは扉を開けて飛び出してきたアンを抱き止める。
大人になったアンは、月夜に照らされた艶やかな髪から花のような香りがした。変わらない金とブルーのグラデーションの瞳だけが、あの頃のアンを思い起こさせた。
だが、その瞳には恐れていた冷やかな、しかし怒りに燃えた色は無かった。今はただ穏やかに昔の友を想う優しい色味に思える。
細く、しかし子どもの頃とは違う長い四肢と指、少し丸みを帯びた体つきが時間の経過を感じさせた。
ブレイクは向き合う事を恐れた大切な友と自分自身をしっかりと受け入れ、ようやく過去の弱い自分との決別を果たす事ができた気がした。
お互いに1日も気まずい気持ちではいたくないほどに、幼いあの頃は大切に想いあっていた友なのだ。双方ともが、10年近く胸にの支えていた思いが解れていった。
「ブレイク、あのね、私が悪いの。あなたははじめから弱くなんてなかったわ。優しさや思いやりは単純な力よりももっと大きな意味を持つもの。それをあなたは始めから持っていた。ごめんなさい、ごめんなさい...!あなたが母さまから頂いた服を守ってあげられなかった自分に怒っていたのに、あなたにも怒ってしまった。あなたは何も悪くないというのに...!」
ブレイクは今では自分よりもずっと小さいアンの頭を撫で、そして
ゴチッ...
と、頭突きをした。
さほど痛くはないが、突然のことに驚いたアンが額を押さえてキョトンとする。
「フッ!ハハッ!!!これでおあいこ、だな。」
ブレイクが晴れやかな笑顔でアンの前に立っていた。ようやくきちんとブレイクの顔を見たアンは驚く。
「ブレイク!その髪、髭も...!」
「ん?あぁ、もう見た目も武装する必要はないって分かったからな。オレが恐れていたアンはこんなに小さくなっちまってたしな。今更オレも女なんて言われないだろ。」
そう言ってブレイクはアンを見下ろし、頭をワシっと掴んで笑う。長くいい加減に括られていたミルクティ色の髪は短く揃えられ、あまり生えてもいなかったバラバラの髭は全て綺麗に剃られていた。
そのブレイクには昔の面影があった。だが、綺麗な中性的な顔立ちには、騎士としての威厳があった。
「私は小さくなってない!ブレイクが大きくなりすぎたのよ!」
アンはぷくっと頬を膨らませる。
すると、突然ブレイクがニヤリと笑ってアンの指先に口付けをした。"感謝と賞賛"の口付け。
その意味を知っており、友人としても普通の事と理解しているアンはふふっと笑った。
「また虐められたら私が守ってあげるわ?」
「そうかよ。それは心強いな。」
そう言ってブレイクは跪くと、今度は手の甲に数秒間の口付けを落とした。これにはアンも驚いた。騎士としての"敬愛"の口付け。
「貴方のように、弱者には常に優しく、強者には常に勇ましく、貴方の敵を討つ矛となりましょう。」
ブレイクは真剣な顔でアンの顔を見上げる。中性的な、だが騎士らしく凛々しいその顔で誓われると、たまったものではない。更にもう一度口付けをされた手の甲に、マシュマロのように柔らかくしっとりとした唇の感触を感じ、唇が離れる瞬間の艶かしさにアンは急に顔が火照る。
それから
「わりぃ、けどやっぱ部屋入るぞ。」
と言ってアンをお姫様抱っこで軽がると抱き上げるとベッドまで行き、下ろした。
「ちょっ!ブレイク!?ひゃっ!?」
そしてーーーーー
アンを座らせると、右足のヒールの靴を脱がせ膝の裏に手を這わせる。そしてアンの足をブレイクの顔の高さまでグッと持ち上げた。
スカートの裾が足の付け根までスルリと落ちそうになるーーーーー
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