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魔法の紅茶専門店  作者: ミイ
105/139

105.団長は天を仰ぐ



「...そもそもの身体能力も素晴らしいのですが、風魔法での強化は恐るべきものですね。」


アーロは口元が引き攣っていた。



...



アンは簡単な護身術を習っては真似をする、それを数十分繰り返していた。


すると、後ろで見ていた精霊達が風魔法で助太刀すると言って聞かなかった。アーロはアンの非力な見た目だけで判断し、それを快諾したのが運のつきだった。



「...嘘だろ。」

コナーが顔を手で覆った。


「...まるで魔法だなー。」

カレブが失笑する。


「魔法だよ。」

珍しく、カレブにコナーの方が突っ込む。




運動神経の良いアンは、すぐに教えてもらった事を吸収した。非常に筋が良い。練習を重ねれば、騎士でもない男ならば一瞬怯ませる事くらいはできそうだ。


とはいえ、非力なアンの技に、屈強なアーロはビクともしない。もちろん、アンもその前提なので一生懸命に真似る。



だが、風魔法で強化された途端、アーロがいとも容易く地面に転がされていた。




その場が凍りついた。



「す、ご、ま!ご、ご、ごめんなさっ...!?」

焦ったアンは上手く謝れていない。アン自身も信じられないとばかりに大きな瞳を見開いている。


コナーとカレブは一瞬の出来事にまったく理解ができず突っ立っていた。アーロが転ばされた事など、実戦含め、入団以降一度も見た事が無かった。おっとりとしたアンの話し声を聞いていると、ますます己の目を疑いたくなる。



アーロは天を仰ぎながら、今の一連の流れをもう一度考えてみた。


アンに手を掴まれ、捻られる。そこまでは互いに力を入れていたわけではなかった。そしてトンッと肩を押され足を払う動作を、先ほどと同じ様にやられただけだ。


アーロはビクともせず、だが型はできたアンに「上手い上手い」と褒めてやるつもりだった。



だが実際には、今こうして地面に転がっているし、魔法が強すぎた事に気付いたアンが一瞬の風魔法で衝撃緩和をしてくれたところだ。



痛いわけではないのに、全く抗うことが出来なかった。これが、精霊付き魔法使いの実力ということか。


「何でこうなった...?」

アーロはポツリと呟いた。


アンは目の前で自分を覗き込み、アワアワしている。ここまで間抜けな姿を晒してしまうと、もはや笑えてくる。魔法とはここまで経験の差も力の差も一瞬で埋めてくるものなのか。


「いや、すまない。やはりあなたは自らを守る術に留まらず、己の力・魔力の限界点を知るべきと思います。」


アーロはそのプライドを保つためにも、起こそうと差し出してくれたアンの手を掴む事は無かった。丁重に断り、サッと立ち上がると団服についた土埃を払った。



後ろではコナーもカレブもオロオロとしている。




「...そもそもの身体能力も素晴らしいのですが、風魔法での強化は恐るべきものですね。」

ここで冒頭のアーロの一言に戻るわけである。


「あの...すみません、最高位精霊達のした事なのでどうか許して頂けると...。」

アンが申し訳なさそうにボソッと言う。


その言葉に、アーロはあんぐりと口を開いてしまった。


「最高位...!?」


アンが魔法使いだと言う事は、護衛に着く可能性のある騎士は皆知らされている。だが、具体的に最高位精霊付きだと言うことまでは知らされていない。


アンはどうかしましたか?とばかりに大きな目でこちらを覗き込んでくる。


「いや、考えてみればそうだな、天候操作に関わる様な精霊が上位精霊でないわけがない。いや、となると私があなたの実力を測り違えただけのこと...。


明日より護身術をお教えしますが、それ以上に限界値を知る事を目的とした方がいいかもしれません。」


アーロはしっかりとアンを見据えて言った。




そして、翌朝。


急遽グレイソンとセトも交えた会議が行われる事となった。


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