102.寄り道回〜騎士団宿舎にて2〜
セトの話は続く。
「しかも、あの人普段ぼんやりしてるくせに、いざとなるとすげぇ格好良くて...。俺らのことすら守っちまうし、サラッと下級層の子供たちの生活も助けちまうし...。
ホント格好良すぎてすげぇ尊敬しちまって...。でもやっぱ抜けてて、可愛くて...!」
すると、ハッ!とセトが真っ赤な顔を上げて、真顔でカレブの顔を見た。
「俺、もしかして病気なのかな...?もしくは変な魔法とか...?あの時の魔物の幻覚か...!!?」
あぁ、ならば納得がいく!とセトは解決の兆しが見えた事に表情が明るくなった。
「そうか!ならば魔物の幻覚効果を確かめれば...!」
騎士の仕事ならば、己の対応可能範囲内だとガッツポーズをする。
「お前、そういう方向にはほんっとにバカなんだなあ。」
やっとマークにグラスを回収してもらったコナーに、バッサリと言い切られた。
「鍛錬バカでもありますね。」
カレブが追い討ちをかける。
「十中八九違うだろうな。」
マークすら助け舟をくれなかった。
「なっ!?なんで分かるんすか!?だけど、そうでなければ俺は、やはり魔法の類...ヘンリー殿に見て頂くしか...。」
セトは両手で頭を抱えて、また俯いた。
「おいやめてくれ!そんな事でヘンリー様を巻き込むな!騎士団の中で何とかしろと言われるに決まっておる。」
マークはさすがに勘弁してくれ、と苦々しい顔をする。
カレブもあまりに見当違いな考えにため息をついた。
「セト、君のその状態だが...特定人物に対してか?」
そして質問をはじめる。
「...はい。」
セトは恥ずかしそうに答える。
「その者と話したいか?」
「まぁ、でも見てるだけでも。何話せばいいか、アレコレ考えてしまうんで...。笑ってくれてたらいいっす。」
「その者に触れたいと思うか?」
「んなっ!?」
この質問にはセトが目に見えて動揺した。ガバッと起き上がりカレブを見つめると、その長いまつ毛をパシパシとさせた。
「〜〜〜っ!た、たしかに髪綺麗だなとか、細え腕だなとか、思い、ます。けど...。ついでに少し...触れてみたいとは...少しだけです。や、でもそんなん妹にだって、頭撫でてやったりしてましたし。」
セトは顔が火照り、瞳孔が開き、その辺にあった書類でパタパタと自分を煽ぎ始めた。団服を脱いで、シャツのボタンを開けているためセトはいつにも増してワイルドで色っぽい。普段は言わない本音を語ると、汗がじんわりと出始めるのを感じる。
こんな状態のセトを見たら、普通の女は「今夜は帰りたくありません」と言うだろう。
(((どう考えても恋だろ、そりゃ。妹を引き合いに出すな...。)))
3人は確証するのだった。
「では、その者を守ってやりたいと思うか?」
カレブは仕方なく、セトが正しく自覚するまで続けようとした。
「え?えぇ、護衛対象ですから。」
「「「...。」」」
その一言に、ふと、3人には嫌な予感がした。そして、同時に可憐な魔法使いとグレイソンの顔も浮かんだ。
「こりゃあ...困難を極めますね...。」
カレブはマークのコップにも酒を並々と注いだ。
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