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01奴隷になりました。

次の話でついに獣耳っ娘が登場します。

よろしくお願いします。

「......ッ」



 鋭い頭痛に俺は思わず両手を額に当てる。

 少し熱があるのか、呼吸が苦しい。



 またあの夢だ。

 またあの時の夢を見た。

 この夢を見た後、どうしようもなく不安になる。



「俺は......ちゃんと生きてるよな」



 俺は顔を顰めながら体を起こす。

 フラッと倒れそうになったが、両手を突きだし身体の重心を支えることで窮地に一生を得た。

 力を入れ、踏ん張りながら立つ。

 何気なく視界に入ってきたのはかわり映えのしないいつもの光景。



 相変わらずの薄い布切れ。



 四方を囲う錆び付いた鉄格子。



 申し訳なさそうに床に敷き詰められた藁。



 空には星が輝いてる。




 これが俺の家。

 勇者だった『奴隷』の家だ。






 ─────────────






 アリアロード帝国王宮、謁見の間。

 黄金にきらびやかに光るその光景はこっちの世界でも、あっちの世界でも見られるものではないだろう。

 壁、床、天井全て金箔で覆われている。

 まるでこの世のものでは無いように、毎度毎度そう思ってしまう。



 国王の周囲に立つデブっちょ大臣は勿論、傍付きや綺麗なメイドさんまでもが豪勢な姿形をしている。



 そんな中、俺の質素な冒険者用の服はある意味目立っていた。

 急に自分が惨めに思えてしまう。



 俺は命を張ってこんな贅沢な暮らしをしているデブのために戦っていたのか?

 同じ人間でありながらも国民を苦しめるこの権力のブタどものために?



 俺は『固有スキル』を持っていない。

 何故かは分からないが異世界から召喚された者は、鍛錬を積むことで『固有スキル』という特殊な技能を使えるようになるらしい。

 そのはずなのだが、どんなに訓練し心身共に鍛えても、俺は固有スキルを手にすることが出来なかった。



 固有スキルを持っていない勇者なんてただの一般人と変わらない。

 魔王と戦って勝てるわけがない。

 それでも俺は、他の勇者が戻るまでと必死に耐えて耐えて魔王を足止めした。



 国民の生活など気にも留めず私財のために『魔王討伐費用』という名のもと増税を繰り返している、最低最悪の国王及び一部の貴族が泣きついてきたからだ。




 そんな事を考えていると、突然謁見の間に雷が落ちたような大きな声が響き渡った。

 五月蝿いな、耳が痛いな。



「よく我の前に顔を出せたな、勇者トーヤ・ハル!!お主は異界より召喚されし最強の勇者の一人であろう!!なのに魔王如きに破れるなど言語道断!!」



 俺はすぐさま流れるように右膝をつき、首を垂れる。



 どうやら国王陛下はお怒りのようだな。

 そういえば、鍛えてくれた騎士団長殿が確か......怒ってる時はまず謝り、それからお世辞でもいいから褒めなさいって言っていた気がする。



「は、申し訳ございません......しかしそのお洋服、とても良くお似合......」



「お世辞は良い!!前々から言おうと思っていたのだが、我が怒るとお主らはすぐに褒め称える!!我はもう騙されんぞ」



「い、いえ、騙すなど......滅相もありません。本当によくお似合いですよ」



 俺が慌ててそう言うと国王は顔を真っ赤にして怒った。

 話を逸らそうとしたってバレてるじゃん。

 これ、もしかしなくてもヤバイ?



 再び雷のような重低音が響く。



「もう良い!!」



「......勇者トーヤ・ハル、アリアロード現国王ランス・アリアロードが命じる。お主から勇者の称号と身分を剥奪する。これからは身分無き者、すなわち『奴隷』として生きていくが良い。.......勇者でありながら魔王も倒せん小僧など必要無い!!衛兵、すぐにこの不届き者を城外へ放り出せ!!」






 ─────────────






 まぁ、なんだ、うん。

 その後すぐに奴隷商人に引き渡され、檻に入れられ取引先へと輸送されてるのが現状。

 今は深夜。

 上を向くと、空に煌びやかに光輝く綺麗な星空が広がっている。

 あっちの世界じゃ中々見れない光景だと思う。



 なんと言うか、王城で鍛錬に励む日々より充実してるかも。

 ご飯は質素で味気ないけど、自分の好きなように食べれるし。

 何より、固有スキル無しで勇者として戦っていたら、また命を落とすような危険と遭遇するかもしれない。



 俺はもう殺される恐怖を感じたくない。

 あの悪寒や絶対的な恐怖、絶望。

 思い出しただけで全身から汗が吹き出す。



 そして何より、彼女のあの『眼』だ。

 蛇のように網膜が横に開くあの瞬間。

 不意に心臓が早鐘のように鳴り始める。



 でも生きてる。

 俺は自分自身に言い聞かせるように言う。

 俺はまだ生きてる。

 もう勇者ではなくなったんだから、戦う必要なんてない。

 もう死への恐怖を感じなくて良いんだ。



「ふぅ......」



 ゆっくりと息を吸い、吐き出す。

 心臓の鼓動も段々と落ち着いていき、発汗も治まった。



「これから俺、どうなんだろうなぁ......」



 いつの間にか、俺は再び眠っていた。

ありがとうございました。

ブックマークしてくださった方が一人。

感激に涙が止まりません。゜∵・(ノД`)∵゜。 うわああん


初心者作家ですがよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 見守りモードで読んでます。 続き楽しみです。
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