00魔王に敗北しました。
処女作なのでおかしい所があるかもしれませんが、ドンドン指摘して下さい。更新は週に3回程を目標に......
よろしくお願いします。
暗いのは最初の数話の予定ですので長い目で見ていただけたらと思います。
はぁ.......はぁ......
胸が破裂しそうなくらい痛い。
かれこれ数十分は全集中してるから当然だけど。
.......なんなんだよ、アレ。
真っ黒で見るからに禍々しいオーラを纏った大きな翼。
頭部から突き出る二つの突起。
加えて背中から飛び出ている無数の触手。
間違いない。召喚された時に話だけは聞いた事がある。
こいつは人族に敵対する敵対生物の中でも最強クラスと恐れられる『魔王』の一人だ。
「はぁ......この程度で自分は選ばれし勇者だと仰るのですか。全く、異世界人も弱体化したものですね。一代前の勇者の中には、もう少し噛みごたえがある者もいましたが......はぁ......魔王が一柱『ベリアル』呆れて何も言えませんよ」
彼女は手で髪をくるくると弄びながらそう言った。
くそ......血を流し過ぎて体に思うように力が入らない。
剣を持つ手が震えている。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
体がフラつき、視界が所々ボヤけている。
「ふむ......そろそろ貴方も限界のようですね。それに私も貴方で遊ぶ事に飽きてきましたし。勇者と言っても召喚されたばかりで『固有スキル』にも目覚めていないのに魔王と戦わされたようですが、お気の毒に。貴方の人生はここで終わります」
俺は絶望する。
自らの命はもう助からないことを悟り、瞳から生気が失われる。
彼女はにこやかに微笑みながら言った。
「ですがご安心を。一撃では終わらせませんので。少しずつ、少しずつ貴方の体力を削っていきましょう」
俺の瞳はもっと深い絶望に色を失う。
彼女は腰に下げていた刀身が朱色の綺麗な、それでいてどこか冷酷な剣を抜いた。
俺は手に握っていた鉄の剣を落とす。
やめてくれ。
俺を殺さないでくれ。
俺は懇願するように彼女に視線を向ける。
俺を見返してきたのは微動だにせずほほえみかけてくる彼女の笑顔だった。
その表情に俺は悟る、いや悟らされた。
頬を生暖かい涙が伝う。
俺はここで死ぬ、もうこれ以上生きることは許されない。そう彼女の目は伝えていた。
俺は目をとじる。
聞こえてきたのは段々と大きくなっていく彼女の足音のみ。
しかし、その音が大きくなるにつれ、もう一つの音が聞こえ始めた。
血が全身を駆け巡っている確かな音。
生きている証拠。
俺はその音に思わず嗚咽が漏れる。
俺はもう死ぬ、これからは何も出来ない。
学校に行く事も出来ない。趣味の切手集めも出来ない。家族や友達とも話せない。大好きなカフェにも行けない。何も食べれない。何も飲めない。何にも触れられない。何も聞こえない。何も見れない。何も考えられない。漫画や小説も読めない。勿論、生きる事も出来ない。それに、恋も出来ない。
死にたくない。
もう一度俺は強く思う。
死にたくない。
死にたくない。
俺は、まだ生きていたい。
その時、俺の胸に焼けつくような痛みが走る。
まるでドロドロに溶けた鉄を押し付けられているみたいだ。
あまり痛くない。感覚が麻痺しているのか?
俺は思わず顔を上げ、魔王の彼女を見つめる。
冷たいなぁ......
なんとなくだが、そう思った。
彼女は剣を回し傷口をえぐりながら抜いた。
あまりの痛みに気を失い、倒れそうになる。
彼女は俺の前髪を掴み、俺の顔を覗き込んだ。
そして彼女は俺の耳元でこう囁いた。
「......まだまだ大丈夫、ですよね」
そこからは覚えていない。
ありがとうございました。これからも頑張りますのでよろしくお願いします。