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7:やっぱり、ただの胡散臭い人です

そんなキリクさんだが、やはり、自称「魔法使い」としての腕は確からしい。

「私」がニコの中で目覚めてから、初めてキリクさんに会った時の事だ。もちろん、その時既にニコとキリクさんは知り合いだった訳だが、


「…………おや?」


あからさまに、キリクさんは首を傾げながらまじまじとこちらを眺めてきた。全てを見透かしてきそうなアメジスト色の双眸が、ニコの奥の奥を見据えてきてドキリとしたものだ。


「そこにいるのは誰だい?」


さすがは、スーパー攻め様!(そこじゃない)

何者かまでは特定出来ないものの、ニコの中に異質な「何か」が存在することには気づいているらしい。ただの胡散臭いだけの見た目が派手なお兄さんではないのだ。


「……どういうことですか?」


早速バレて一瞬ビビったものの、持つべき情報量の多さでは圧倒的に「私」に分がある。つとめて冷静に、ニコは問い返した。


「何か、これまでの君とは違う気配を君の中に感じる……一体誰かな?」


「僕は、ニコ・キッドソン以外の何者でもないのですが……」


「…………」


しらばっくれてみたが、キリクさんは見逃してくれないようだ。ニコの中の「私」を見据えたまま、視線を逸らしてくれない。

小さく嘆息して、ニコは観念した。


「まだ、僕も受け止めきれてなくて……もう少し落ち着いて、自分でも整理しきれたらお話します。それまで、このことはそっとしておいてもらえませんか?ひとつ確かだと断言出来るできるのは、僕は間違いなく、ニコ・キッドソンだ、ということです」


前半は嘘で、後半は本当。自分の状況は既に理解出来ているが、上手く説明できる自信はない。

さて、これで誤魔化しきれなかったらどうしようかと身構えたが、案外簡単にキリクさんは引き下がってくれた。ニコの中の「異質な何か」の存在が一応肯定されたことに満足したのかもしれない。


「……そうだね。別に君を追い詰めたいわけじゃない。ただ、力になれることがあるかもしれない。心の準備が出来るのを、オレは待ってるよ」


紫水晶の瞳を蠱惑的に細めながら、キリクさんは怪しく微笑んだ。

うーん、やっぱり胡散臭い!

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