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77:ざわめき


「ああ……そう言えば、数日まえから……先月だったか?精霊のざわめきがひどく強まった時期があったが……最近も波はあるものの、似たようなざわめきを感じる。何かの前触れかもしれない」


「精霊のざわめき……」


確かに。所謂自然を司る精霊界からの使者が目の前にやって来ていたのだ。精霊のざわめきも感じるに違いない。


「一瞬、昔の知り合いか……俺を追ってきた輩の一味かとも思ったんだが……全く殺気めいたものは感じなかったから、一先ず放置することにした。害はないだろう」


しれっと言ってのけるリュードは流石のクールさである。取り付く島もない。ニコが主人公の立場だったら早々にリュードの攻略は断念してしまいそうだ。


「まあ、いっか。リュードにとってはそれが最善なら……」


「……お前も、何か訳アリのようだな、ニコ。敢えて深くは聞かないが」


「リュードは話が早くて助かるよ」


ニコが何かしら理由があって、リュードにその旅芸人のことを尋ねて来たのだと分かっていながら追及はしてこない。もちろん彼自身が、いろいろ聞かれたくないこと、知られたくないことの宝庫みたいな立場であるせいでもあろうが。


「ついでにもうひとつお願いがあるんだけど」


「どうした?」


「同じことをキリクさんにも聞きたいから、リュードも一緒についてきてくれない?」


「別に構わないが……」


亡国の王子様をモブキャラが良いように使うのはどうかと思いつつ、やはり一人でキリクさんに会いに行くのは気が進まない。


「お前、キリクとも何かあったのか?」


キリクとも、とは?何か、とは?

いろいろ聞きたいことはあったが、ニコはグッと飲み込んだ。


「キリクさんのことがちょっと苦手なだけだよ。一人だと何だか上手く丸め込まれちゃいそうでさ」

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