76:天使様の目的は
居心地悪そうに目を白黒させているレインに、ニコは苦笑した。
「へぇ……レインってモテるんだね」
「からかわないでよ、二コ……本当に、僕も何が何だかわからなくて……」
照れているのか、レインの語尾がごにょごにょと力なく消える。
どうも距離の詰め方が雑だ。人見知りで大人しいレインとの親密度をあげようと思えば、もっと時間をかけなければならない。
確かに、本来のゲーム開始の日付から既に約一ヶ月が経過している。ゲームのエンディングであるカーニバルまで、残り二ヶ月あまり。どうだろう、そこまで焦る必要はあるのだろうか。
普通にシナリオを絞ればハッピーエンドは迎えられるスケジュールだとは思うのだが。
イマイチ、主人公の目的が読み切れない。
「旅芸人一座の一員、なんだよね、その人は。世界中を旅して回ってるような人達だから、やっぱりコミュニケーション能力が高いんじゃない?レインと仲良くなりなりたくて、そんなこと言ったのかも」
「……そういうもの、なのかな」
なんだか知らず知らずのうちに主人公をフォローしているみたいになってしまったニコだった。不本意ではあるが、天使様である主人公が、各攻略対象キャラに危害を加えるような行動をするとは思えない。
ニコ相手に、ならば別だが。




