75:接触
「ニコ?……やっぱり、体調悪い?」
「えっ?あ、ごめん、ボーっとしてた」
レインをよそに、今後の動き方について考えを巡らせていたニコは、つくづく自分は薄情者なのかもしれないなぁと思った。こんなに心配してくれているレインを前に、心ここに在らずだなんて。
内心、懺悔しつつ、ニコはレインに向き直ると改めて問うた。
「浮世離れって、よっぽど変わった人なんだね。それで、その人は何で診療所に?旅芸人さんなんだよね?怪我でもしたの?」
「えっと……患者さんのことは、その……詳しくは教えられないんだけど……」
すると、急にレインは歯切れか悪くなる。確かに患者のプライバシーはあるだろうが、そもそも不思議な患者の話題を出したのはレインの方だと言うのに。どうも様子がおかしい。
(主人公め……どうやら早々に手を出してきたな……?)
全てのシナリオを網羅している「私」にしてみれば、大方察することは容易い。主人公は焦っているのかもしれない。あくまでも、前世の記憶を頼りにした想像だけども。
「なに?貴方を思うと夜も眠れない、これは恋の病でしょうか?どうやったら治せますか?とでも言われたの?」
「ぶっ」
レインが吹き出したかと思うと急に咳き込みはじめる。いや、正解かい。主人公もだいぶ古風な手を使ってきたものである。あまりに直球すぎやしないか。




