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ニコは内心身構える。
「キリクさんの知り合いらしくて、旅芸人一座のメンバーだそうだよ。見た目もちょっと、この辺りの人じゃないんだろうなぁっていうか、浮世離れした感じで」
浮世離れ、そう見えて当然だろう。だって相手は「天使様」なのだから。
どうやら本格的に、主人公が各攻略対象キャラに接触を計り始めたと見て間違いなさそうだ。キリクさんは最初から主人公の手中にある、いやむしろ自ら進んで手を貸しているのかもしれないが、とにかく主人公側の人間だと考えるのが妥当だ。
(できるだけ主人公には会いたくないけど、多分主人公の方からこちらにも接触してくる可能性はあるだろうなぁ。できるだけ会わずに情報を集めないと……リュードにも話をするとして、キリクさんには……どうしたものかな)
キリクさんの元を尋ねても、また結局はお互いの腹の探り合いで終わってしまいそうだ。しかし主人公に会わずに主人公の情報を得るためには、キリクさんと対峙することは避けられそうにない。
(主人公とキリクさん、どっちの方が苦手ですか?って、話かなぁ)
正直、どちらも苦手だ。




