表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/85

58:多分バレてない


しまった。

一瞬、表情に出してしまった。いくらでもとぼける方法はあったろうに。ニコは冷静を装いつつ、内心舌打ちした。

ゼルが四葉珈琲店にわざと置き忘れた指輪は、騎士団長の証として現国王から直々に授かった貴重なものだ。この情報は間違いないものだが、確かに、普通の庶民はその事実は知らない。逸話を知っていたとしても、ゼルの指輪を見てすぐ気がつくことは難しいだろう。

前世の攻略情報があったりしなければ。ニコのように。

しかし、記憶を辿ってみたがニコはわざわざ「現国王から賜った一つしかない騎士団長の証の指輪」などと言ってはいない、はず。


「どうして、って……貴族様が持ってらっしゃる指輪なんて、みんな高価で貴重なものなのではないのですか?僕は全く装飾品には興味無いですし、目利きじゃないのでさっぱりわかりませんが」


だからそうやって誤魔化すことも出来たはずだ。貴重な指輪だと知っていたわけではなく、貴族の持っている指輪だから貴重品だと判断した、ということだ。


「ふーん……まあ、そうなるよね」


ゼルはやはり納得してないようで、訝しげにニコを覗き込んでいる。


「僕みたいなのがその指輪を持っていたら、間違いなく盗品だと疑われるでしょう。今後はもっと持ち運びに注意を払って頂きたいです」


「あはは。確かに、そうだね。ニコがなかなかおとなしそうに見えて無鉄砲だってことがわかったからね。気をつける」


気をつけるも何も、同じ相手に同じ手は使えないだろうが。今後ゼルが意中の相手に同じ手を使って相手が戸惑ったり、逆に本当に指輪が行方不明になったりしないことを、ニコは切実に願った。


「さて、と。無事指輪も戻って来たし。ニコもそろそろ居心地がわるいだろ。扉まで案内するよ」


ゼルの申し出に、ニコは甘えることにした。一人では迷子になるか連行されるかが関の山である。


「待ちたまえ」


ゼルの背中を追って、ニコが歩き始めると、凛と冴えた声が行く道を遮った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ