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52:とりあえず、有罪

甲冑の騎士が持っていた槍を扉の前に翳して先を塞いでくる。

ニコはゴクリと息を飲むと、ゆっくりと深呼吸してから両門番に告げる。


「許可証は持っていません」


「ならば、この先を通すわけには行かない。帰れ」


いかにもモブな門番と言わんばかりのセリフまわしだった。RPGゲームでよく見るヤツ。

そんなモブ騎士二人にこれでも喰らえ、という心持ちで、ニコはベストのポケットから指輪を取り出して見せた。


「ゼル・ウィネガー騎士団長の忘れ物をお届けに参りました。お取次ぎ願えないでしょうか?」


ニコの言葉に、騎士二人は向かい合って首を傾げている。意表を突いたようだった。渡された指輪をマジマジと眺め、再び顔を見合わせる。


「騎士団長の忘れ物、だと?」


「何故貴様のような者が持っているのだ?」


嘘は言っていない。忘れ物というか、意図的にゼルが置いていったもの、であるが。ゼルにしてみれば、気になる相手とまた会う口実作りなのだろうが、そのためにこの国に一つしかない貴重な指輪を使うんじゃない。今回の突撃は、ゼルの思いどおりにはならないぞ、という意思表示でもあるのだ。


「僕の店に騎士団長が来られて、忘れて行かれたのです」


「貴様の店……?」


頭の上から足の先までマジマジと見られる。こうも分かりやすく見下されるのも新鮮だった。人類皆平等、国家は一つ、なんて言ったところで、階級や立場による差別は根強く残っている。


「騎士団長が中流階級居住区の店に行ったりするか?」


「いや、しないだろ」


いやするんだっつーの。

ゼルは貴族出身だが庶民にも分け隔てない変わり者なのだ。しかし公休日に庶民の生活圏に紛れ込んでいるなんて、余程親しい人物にしかバレていないのだろう。

最初から信用されるなど期待はしていない。むしろそれを狙ってきたのだ。


「怪しい奴め。何故貴様が騎士団長の指輪を持っているのか。追及する必要があるな」


「こちらへ来てもらおうか」


あっという間に、両手を身体の後ろで拘束されてしまう。願ったり叶ったりである。


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