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49:最後の一人
翌日。
早朝、ニコはひとつの覚悟を持ってそこに立っていた。
ショーンクラウド精霊教寺院の正門前。
中流階級と上流階級の居住区の間、中央広場から伸びる大階段を上った先にある、この王国のシンボル。
国立の博物館、図書館、美術館を擁し、観光客や庶民を受け入れる一方で、この国の政治を動かしている国会議事堂もその中にあり、こちらは許可なく立ち入り禁止だった。
普段生活していて、余程熱心な精霊教の信者でなければなかなか来る機会もない。東京に住んでる人が東京タワーにいかない、みたいなものだった。
しかし今日ニコは、その「許可なく立ち入り禁止」の場所に用がある。
ベストのポケットには、ゼルの置き土産、騎士団長の指輪がある。
これの返却、という名目で立ち寄れば、恐らく、彼が動くはず、とニコは踏んでいた。
攻略対象キャラ六人目にして、最後の一人。
執政官、エミール・ロッサム。
彼に出会うために、やってきたのだ。




