46:そう言えば忘れてたのですが
「あ、そう言えば……あの、今日の招待って僕だけなんでしょうか?」
「どういう意味だ?」
「あの、ジェラルドさんを介抱するにあたって、キリク・ダンストという中流階級のリーダー的存在の人に手助けしてもらったのですが……」
「あ、その方でしたら、忙しいので食事会より金一封にしてくれと断られましてね」
(キリクさんんんんんんんッ!!!)
らしいけど!らしいけども!!
もうちょっと言葉と態度選べよ!!!
ニコがギリギリと奥歯を噛み締めていると、ジェラルドは苦笑した。
「いや、その、キリクとかいう奴の言い分は最もだ。普通は金品の方がいいんじゃないか?俺と食事しても何の得もないだろうし。ニコだって」
「僕的には、あまり仰々しくされたくなかったので、今日みたいな食事会で良かったです。ご存知の通り、生活に困ってませんし、僕が勝手にした事なのにお金や物を頂いてしまうのは申し訳なくて」
「本当におかしな奴だな、ニコは」
ジェラルドは目を細める。
だからそんな優しい眼差しでこちらを見ないで頂きたい。
「あ、でも流石に昨日の朝食代は払わせてくれよ」
「あれは賄いみたいなものですから。無料です」
「徹底してるな!」
ジェラルドも観念してくれたらしい。
「これで貸し借りはなしです」
「なるほど。俺たちは対等な関係になれたというわけだな」
なんでやねん。
「いや、それは……」
ニコが口ごもると、ジェラルドはふと真顔になる。
「寂しいこと言うなよ、ニコ。俺が言える立場ではないが、ニコさえよければ、またここで食事をしよう。お礼とか、お詫びとか、関係なく」
切実な申し出だった。
いやだから、何故こうも今日は口説かれているのか。




