45:賭け
何に納得したのかはわからないが、ジェラルドは頷いた。
「ニコがちょっと他と違う気がする理由が何となくわかった」
「他と違う……」
自分ではよくわからない。いや、理由があるとしたら前世の記憶があるせいだ。とは、思うものの、流石にそれはぶっちゃけたところで納得してはもらえまい。
「ジェラルドさんに言われると、ちょっと……」
「呼び捨てでいい」
「そういうところですよ!」
他と違うと言うなら、ジェラルドこそ他の貴族と違う。ゼルもだけど。
「……あ」
「ん?どうかしたか?」
「いえ……」
ゼルで思い出した。
ベストのポケットの中。騎士団長の指輪の存在に。
今、チャンスかもしれない。
ポケットから指輪を取り出し、事情を説明してジェラルドからゼルに返してもらえば……。
ジェラルドとゼルが頻繁に会っているかはわからないが、少なくとも不仲ではないだろう。
普通の貴族が相手だったら、盗難の疑いをもたれてお縄になるかもしれないが、ジェラルドならきっとわかってくれる。いきなりゼルの話をしたら面食らうだろうが……。
そう。普通の貴族が相手だったら……。
「なんでもないです」
ジェラルドに違和感を与えないくらいの逡巡だったと思う。ニコは言葉を飲み込んだ。
ジェラルドの力を借りる訳にはいかない。
「最後の一人」に出会うために、ニコはもしかしたら命懸けになるかもしれない選択肢を選ぼうとしていた。




