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42:即席テラス席

ニコが手伝おうか迷って右往左往している間に、テラスにテーブルとイス二脚と日除けの傘が運び込まれ、あっという間にテラス席が完成してしまった。いやトム氏有能すぎ!


「ニコさんはお客様ですから。お手を煩わせるわけには参りませんよ」


トム氏は微笑んで、ニコに着席するよう促した。

館を背に、絶景を前に、イスに座る。日が高くて眩しいくらいだったが、日除けがあるとちょうどよく、吹き抜ける風も心地よい。

席ひとつ分くらい間をあけて、ジェラルドも隣に座る。


「いつもこちらで召し上がってるんですか?」


「いや。軽く飲んだりはするが、食事をすることはほぼないな」


「独りで召し上がっても寂しいですもんね」


「トム……」


ジェラルドが何かお小言を言いかける前に、トム氏はしれっと退出していってしまった。主従というより、気のおけない仲なんだなぁ。ジェラルドがひとりぼっちじゃなくて良かった。ニコはしみじみ思う。


「やれやれ」


「この眺めの中食事ができるのは贅沢ですねぇ」


「贅沢、か。見慣れてしまっていたが、確かに、その通りだな」


こんなに穏やかな時間を過ごしてしまっていいのだろうが。温かさと多幸感で頭がぽやぽやしてきてしまう。


「お待たせ致しました。お口にあうと良いのですが……」


「うわぁ!」


ニコは感激して声をあげた。

トム氏が運んできた料理が意外なものだったからだ。

例えるならファミレスの洋食ワンプレート。

パンとサラダとメインの肉料理(ハンバーグである)が、大皿一枚にギュッと乗っている。

コース料理で、見たことも無い食材が次から次へと運ばれてきたらどうしようとか、テーブルマナーもよくわからんぞとか、いろいろ不安だったのだが、拍子抜けである。


「美味しそう!これ、ひょっとして僕に気をつかってくれたのでしょうか?」


ニコが興奮気味に問うと、


「いえいえ、単純に坊っちゃまが貧乏舌なんです。毎日の食事がこんな感じですよ」


「トームー!」


有能だが一言多いトム氏である。


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