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34:カフェ店員の少年、仕事する

「あははは!ちょっと、何その顔!不審者見る目で見ないでよ!」


一瞬の沈黙の後、ゼルが吹き出す。余程ニコは変な顔をしていたのだろう。爆笑している。どうも笑いの沸点が低い上に笑い上戸のようである。


「おっかしいなぁ〜。思ってたリアクションと違うんだよなぁ〜!君、ほんと面白いね!」


勝手に面白がられても困る。が、察するに、先程からのゼルの態度は、やはり何かしらニコにアピールするものであったのは間違いなさそうだ。からかっているだけなのかもしれないが、それだとなおタチが悪い。


「僕なんか相手にそんな思わせぶりなこと言って何が目的なんですか?」


「うわぁ、手厳しいなぁ。ごめんごめん。怒った?」


「怒ってはいないですが、何か、試されているようで不愉快です」


「それ怒ってるじゃん!」


またゼルが爆笑している。なんなんだ、この人。なんだか本気で不愉快になってきたニコだった。


「そういうセリフは、紳士淑女の社交場か、もっとムードのある場所で相手を選んで言った方がいいですよ」


「肝に銘じます」


目尻の涙を拭いながら(笑い泣きしてたらしい。どんだけやねん)、全く肝に銘じる気のない声色でゼルは言った。


「場所も相手も選んだつもりだったんだけどね。まぁ、焦りすぎもよくないし。これ以上何か言ったら本気で嫌われそうだから、今からは普通にお客さんするよ」


そう言って、ゼルは人の悪そうな眼光を悟らせまいとするかのように微笑んだ。とっくにバレてるけどな。

ゼルが過去の経験から恋愛対象が同性だってことも、こちらは知識として知っている。だからと言って、まさか会った翌日に口説かれる展開など全く予想出来なかったけれど。

やはり、おかしなことになっている。確実に。

内心、ニコは結構テンパっていたのだが、努めて冷静に、いかにもカフェ店員の少年らしいセリフを告げた。


「お客様、ご注文は?」

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