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32:来襲
翌日。
いつもと同じようで同じでない朝が来た。
いつもと同じでない理由。
ニコがいつもと同じように朝の仕込みをしていたら、四葉珈琲店に来客があったのである。
そもそも来客だけでも珍しいのに、そのお客さんが大問題だった。
「こんにちはー!って、あれ?開いてる?」
カランコロンと玄関のベルが鳴って、現れたのは赤毛の長身の爽やかな男。
ショーンクラウド王国騎士団長、ゼル・ウィネガーだった。
(なんで!?)
ニコは「いらっしゃいませ」すら言うのを忘れてテンパっていた。普段から言い慣れてはいないのだが、それにしても意外な来客すぎる。
「えっと……あの、どうして……?」
しかも昨日の今日である。
どうして騎士団長が?
「どうしてって、コーヒーを飲みに来たんだよ」
当然でしょ、と言わんばかりに、ゼルは満面の笑みで言ってのけた。




