28:今日も推しが過保護すぎる件について
「ニコって普段はそんなことないのに、時々突拍子もないことをするから心配になるよ……」
「うー……レインまで」
「責めてるわけじゃなくて。ニコは優しいから、なんだか気がついたら大事に首を突っ込んでるというか……その……」
「別に僕は優しいわけじゃないよ。相手のためっていうより、全部自分のためにやってる。今回のことだって、あの貴族さんがあのまま野垂れ死んだら寝覚めが悪いなーって思っただけで」
これまでもニコは、確かに過去、固有スキル「お節介」を駆使して色んなことに首を突っ込んではいた。それが大きなトラブルになったことはなかった、はず。実は大事になっていて知らなかったとか、周囲の誰か(例えば養父母とか)が火消ししてくれていたとかかもしれないが、とにかく今回のような大事にはなっていなかったのだ。
「私」が出しゃばったばかりに、モブキャラのニコを渦中に飛び込ませてしまった。ただひたすらに反省である。いや、そもそもニコが私で私はニコなのだけど。あー、この辺のボーダーが面倒くさい!
「そうかもしれないけど……。もし、相手の貴族やその身内が誘拐だとか大騒ぎしていたら、処罰されてたかもしれないんだよ?ニコの言い分は全く聞きいられずに……」
「まぁその辺は、運が良かったかもな。相手は現国王の弟とは言え、今や王位継承権もなく、王政に一切関わってないほぼニート貴族だ。そこまで騒ぎになってないのは、つまり国を上げて血眼になって捜索されてないってことは、そいつがこの国にとって重要じゃないと思われてるってことだろ」
「……なんだか可哀想だね」
そう。ジェラルドルートは本当に切ない。国から必要とされず、やさぐれまくってるジェラルドを助けてあげたい……わけではないけど、彼が助けられて生きる気力を取り戻していく過程を外野から眺めたい。
もう金輪際関わらない方がいいと分かっているのに、もう一方では、せっかく邂逅イベントがおこったのだからその先を見てみたい好奇心にも駆られている。
「ほら、言ってるそばから同情してる。ニコはやっぱり優しいんだよ。できればニコ、もうその貴族の連中と、一人で会うのはやめてほしい。ニコの身に何かおこったら、僕は……」
レインが心配するのも最もだ。きっと、顔に出ているのだろう。また何かしでかしそうな感じが。
ただ、一方で、そこまで心配されるとちょっと、なぁ……という気持ちも湧いてくる。
リスロマンティック志向の性である。あんまりグイグイ来られると引いてしまう。できるなら、大好きな推しに対して「ウザイ」とか思いたくない。
「あのね、レイン。僕は君の妹のチェルシーじゃないよ。頼りないかもしれないけど、一応大人だし男なんだからね。そんなに信用がないと傷つくなぁ」
なので、一応「これ以上はストップ!」の意思表示としてくぎをさしておいた。
ニコの言葉に、レインだけでなく、何故かリュードまで複雑そうな顔をしていた。
わかってないな、とでも言いたげな。




