24:騎士団長、登場
ニコも慌てて、ジェラルドを追って店を飛び出した。
すると、案の定、四葉珈琲店入口の前で、ジェラルドは立ち尽くし、途方に暮れていた。
「ここは……どこだ!?」
「まー、そうなりますよねー……」
ニコは苦笑した。
入り組んだ狭い路地と似たような石造りの壁と階段が続く周辺は、慣れてない人間には迷宮に等しい。ジェラルドが迷子になる前でよかった。
「中央広場、ですよね。案内するのでついてきてください」
「……頼む」
頷いて、ニコは足早に歩き出した。ジェラルドがそれに続く。
そんな二人の背中を、レインは複雑そうな表情で見送っていた。
「ニコ……」
いろいろ聞きたいことがあったが、確かめるのが怖い気もした。
知っている人間からすれば、中央広場までは徒歩五分位の道筋である。しかし、いかんせん狭くて入り組んでおり、似たような景色が続く上に、壁が高いので見渡しても今自分がどこにいるのか分からない、なんてことにもなりやすく、よく観光客が半べそになりながら迷い込んできたりする。強いてあげるなら、遠くに聞こえる中央広場の喧騒に耳をすませて、音のする方へ歩いていけば、いつかはたどり着けるだろう。もしくは、忍者のように壁を駆け上がって、上から探してみれば良い。リュード辺りが実際にやってそうではある。
急いだのできっかり三分で、ニコとジェラルドは中央広場についた。そこには分かりやすくギャラリーが集まっていて、その真ん中に、赤い甲冑を纏った人物が、焦げ茶色の立派な鬣の馬に跨って闊歩していた。
「やっぱりか……」
(やっぱりか……)
ジェラルドのつぶやきと、ニコの内心の声が見事にハモる。二人が予想していた通りの人物が、目の前にいたからだ。
赤い甲冑の人物が、二人に、いや、ジェラルドに気づいた。カポカポと軽やかな音を立てながら、馬がこちらへ近づいてくる。
「ジェラルド!こんなところに居たのか!いやー、探したよ!」
明朗闊達な声が降ってくる。
赤毛の単発に、茶色の瞳。人好きする微笑を浮かべたその人こそ、ショーンクラウド王国騎士団長様、そして攻略対象キャラの一人、ゼル・ウィネガーである。




