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22:今後、物語に何かしら影響がありそうな出会い

(うーん……状況が謎だ……謎すぎる)


改めて目の前の光景に愕然とするニコなのである。

なぜ、ジェラルドと二人、向かい合ってパンケーキ(多め)を食しているのか。しかも、黙々と。食べ始めてから一切会話がない。何故だ。教育の違いか。宗教上の違いか。

もし、ジェラルドが出されたものは残さず食べろとかいう育ち方をしていたら、確実にニコの行為は嫌がらせである。二日酔いにパンケーキ四枚残さず食えとか。ひどすぎる。

自分の分を黙々と食しながら(基本はバターとハチミツだが、今食べているのは味変でレモンのジャムをかけて)、気づかれないようにチラチラと目の前の様子を伺う。ジェラルドはジェラルドで、この空間には自分とパンケーキしか存在していないかのように、粛々とパンケーキに向き合っている。見た目と所作が美しいせいで、パンケーキを食べている、ただそれだけで何やら厳かな雰囲気すら漂ってくる始末である。美しいって、罪。

それからしばらく、淡々と朝の時間が流れ、


「ご馳走様」


ジェラルドがナイフとフォークを置いた。パンケーキもカフェラテも、キレイにトレーから無くなっている。


「……お粗末様でした」


全部食べられてしまった。いや、出したのは自分なんだけど。ニコは細い目を精一杯まん丸にしながら、同じく自分も同量平らげて、二つのトレーを片付けはじめた。


「朝食の礼も、まとめてするから」


「いやいや、こっちが勝手にお出ししただけですから!気にしないでください!」


「そうも言ってられないだろう。ここまで世話になっておいて。ジョリー家総出で礼をしなければ」


「ぜっっっっったいに止めて下さいっ!!」


釘を刺したものの、思案顔のジェラルドに届いていたかどうか。

自分から首を突っ込んでおいて今更だが、これ以上ジェラルドに関わるのは遠慮したい。ニコがジェラルドルートに介入してしまったことで、今後の物語がどうなるのか、より読めなくなってしまったのだから。


(この世界線のジェラルド、なんだか可愛いからもうちょっと見てみたい気もするんだけど!するんだけど!!)


いやいや、欲張ってはいけない。身を滅ぼす未来がみえる。もう片足くらい滅んでそう。

とにかく、今後は目の前にフラグが転がっていても、喜び勇んで立てに行ってはいけない。モブキャラとして、モブキャラらしく、物語に介入しないように平々凡々、穏やかに生きていかなくては。


ニコが再度、モブキャラらしくモブキャラとして生きていく決意を新たにしていたその時。


カランコロン……と、入口玄関のベルが来客を告げた。


「おはよう、ニコ。今朝はなんだか騒がしくて……あれ?お客さん?」


「れ、レイン!!」


現れたのはレインだった。

いや、レイン以外ありえない、というか。

普段からこの時間にわざわざこんな辺鄙な所にある四葉珈琲店に足を運んでくるのは、そもそもレインしか存在しないのである。

にも関わらず、今日ばかりはすっかり失念していた。うっかり飛び上がらんばかりに驚いてしまったニコである。


そして、本来なら、ここで出会うはずのない二人が出会ってしまったのだった。

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