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17:モブキャラには荷が重いです

こんなときにモブキャラ特有?のお節介が発動するとは思わなかった。いや、これもモブキャラとして生きる上で避けては通れない宿命なのかもしれない。

いや、そもそも、ゲームでは酔っ払いジェラルドを主人公(※精霊界からの使者、つまり天使的な)が助けるのであって、モブキャラ(凡人。見た目も、能力的にも)が助けるパターンは流石の私も知らないのであって……。

結果、脱力した長身男性を背負って歩く羽目になっているのである。残念ながら、ニコには主人公敵な特殊能力はない。馬力もない。人並み以下のもやしボーイである。ゲーム本編では暗転の後場面転換していたが、リアルではそうはいかない。知ってた。知ってたけども!


(吐くなよ!絶対に吐くなよ!これはフリでもなんでもない!絶対に吐いたりするなよ!)


何やらむにゃむにゃ聞こえてくる頭上に念を送りながら、何とか倒れるのを堪えて、亀の歩みで一歩一歩進んでいく。

こんなとき、助け舟を出してくる都合のいいモブキャラは居ないものだろうか。計ったかのように人気がない。むしろ遠巻きに不審げに見られた方が精神的ダメージが大きい気もするが。

しかし、酔っぱらいを放置して帰るのは良心が咎めたため厄介な荷物を背負い込むことになっている訳だが、この調子だと日が暮れる頃には共倒れになってしまいそうだ。己の腕力を過信していた。

モブキャラの領分としては、メインキャラの絡むイベントはスルーが正しい。分かっている。分かっているのに、あの時、ジェラルドの姿を見た途端、体が動いていた。そして今、ものすごい後悔に苛まれている。


ゴーン……ゴーン……ゴーン……ゴーン……


その時、本日二度目、日暮れを告げるショーンクラウド教会の鐘が高らかに鳴り響いた。

アンリー海に、夕日が飲み込まれていく。

暗くなっていく辺りに、ニコは焦燥感を募らせる。このままではイベントクラッシャーな上に、全く手助け出来てないお節介野郎として夜の街で共倒れてしまう。

とにかく、誰かに助けを求めよう。

ニコは診療所を目指そうかと思いついた。が、港からだと距離が微妙だ。自宅、四葉珈琲店までとほぼ距離が変わらない。しかし、自宅までは細かい石の階段の細道を行かなくてはならない。無理。酔っぱらい背負っては絶対に無理。


「やあ、ニコじゃないか。なんだか面白いことになってるねぇ」


その時、暗闇から、からかうような、小馬鹿にしたような声が降ってきた。


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