14:事件、発生?
そしてまた朝が来る。当たり前のように。
4月20日、晴れ。
毎日ピリピリしているのが馬鹿らしくなるくらい、何も変わらない日々が続いていた。
緊張感と知恵熱もだいぶ緩やかになり、おだやかな日常をいつものように享受出来るようになってきた頃。
事件が、発生する!
朝起きて、身支度をして、お客さんの来ない四葉珈琲店のキッチンで簡単な手料理を作って、キリクさんをはじめとする街の仲間達に配って(代わりに何か別のお裾分けを貰ったり)、レインとリュードとランチを食べて……。
全くと言っていいほど、昨日までと変わらない今日を過ごしていた。昼過ぎまでは。
その日、ランチのあと、レインは仕事に戻って行き、リュードと二人残って、他愛ない話をしていた時だ。
「最近、精霊がざわついている……気がする」
「精霊が?」
リュードがふと、空を見つめながら呟いた。
わかるの?とは敢えて問わない。リュードの故郷は、精霊教の大元となった、もつと原始的な精霊信仰の国だったようで、その王族にはシャーマン的な力が宿ると言い伝えられているらしい。「魔法使い」であるキリクさん程ではないものの、精霊の気配や言葉を察したり出来るようだ。
「何かが、水面下で動き出しているような……」
頷き、リュードは眉間に皺を寄せた。彼の母国は先の戦争で滅びている。何か良からぬ兆候では無いかと心配なのだろう。
「そう……?いつもと何も変わらないように見えるけどなぁ」
昨日と同じ空、海、街。
精霊の気配など察せようもなく、かつ精霊教の信者でもないニコには全く違いなどわからないのだけど。
でも、胸の奥の方で、何か予感めいたものが、こっそりと灯るような、そんな気がしたのも事実。
(ついに、ついにゲームスタート?やっと?主人公登場なのか?)
少し速くなる鼓動を抑えつつ、ニコはリュードと別れ、家路を歩き出した。




