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13:ゲーム開始……してる?

そして、ついにその4月1日がやってきた。

ゲームスタート。

その日は夜明けの鐘と共に、まだ薄暗い空から一筋の光が梯子のように地上に伸びていた……のを見た人がいたとかなんとか。


当日、ニコは朝から戦々恐々としていたが、彼の意識とは裏腹に、思いのほか何も起こらず、昨日までのおだやかな日々が続くこととなる。

ほっとする反面、いやいや油断ならないと緊張感を保つ。

その日から、レイン、リュード、キリクさんを遠目に観察することが日課となった。

もしも、ゲームの主人公がこの国に現れているならば、必ず攻略対象キャラに接触するはずだからである。


「……何してるの、ニコ?」


ちょっと離れた街路樹の木陰から診療所を見張っていたら、出先から戻ってきたレインに発見されて怪しまれたりした。


「レイン、おはよう!ところで、今日、その……変わった新しい患者さんとか、来たりした!?」


「今日はいつもの人しか来てないけど……」


「そう!ならいいんだ!じゃあね!!」


というような会話を毎日繰り返すこととなった。リュード、キリクさんにもそう。主人公が攻略対象キャラに接触する場面にウッカリ鉢合わせないように、行動を先読みして動かなければ……。


しかし、それから数日が経っても、主人公らしき人物は接触してくる気配がない。


(うーん、これは恐らく主人公は「貴族ルート」に入ったと考えるべきかなぁ……)


ゲーム版ショークラは、大きくわけてふたつのスタート地点がある。最初の行動範囲を「上流階級居住区」にする「貴族ルート」と、「中流階級居住区」にする「庶民ルート」だ。どちらを選んでも攻略対象キャラ全員と出会えるが、「庶民ルート」を選んだ方が、序盤にレイン、リュード、キリクさんとは出会える。逆に、残り三人とは「貴族ルート」だと早く出会える。実際、ニコは中流階級居住区の人間なので、残り三人とはまだ出会えていないし、普通に生活していたらこのまま出会うことはないだろう。


(そうだとしたら、まだ庶民ルートの3人と出会えるようになるルートが開くのはまだ1ヶ月近く先だから……そんなに構えることもないのかなぁ)


あと、さすがに考えすぎだとは思うが、「主人公が現れていない」「ゲームが始まっていない」という可能性もわずかながら、ある。


(私が存在することで、また何かしら補整がかかって、ゲームがスタートしてない、もしくはスタートが遅れている……?)


あれこれ考えすぎて知恵熱が出そうだった。

とにかく、まだまだ安心出来ない日々は続きそうだった。

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