12:そして、ゲーム開始
BLゲーム「ショーンクラウドに鳴る鐘は」は、4月1日から100日間の物語である。その間に、精霊界からの使者である主人公は、攻略対象キャラ同士、もしくは自らが相手役となって、「愛の成就」に導かなくてはならない。所謂ターン制、100ターンのゲームなのである。
カフェ店員の少年ことニコの中で私が目覚めたのが2月5日。それからのんびりとおだやかな日時を積み重ねてきたが、月日が経つにつれて、ニコの中でふわふわとした、焦燥感のようなものが芽生えてきた。
ゲーム開始となる「4月1日」が日に日に迫ってきているからだ。
レインやリュード、キリクさんの年齢から察するに、今年の4月1日が「ゲーム開始」の日であることは間違いない。ただでさえ謎の補整で、攻略対象キャラと、モブキャラの分際でかなり関わってしまっているのに、その上主人公キャラ、ゲームの進行にまで関わってしまったら……。これまでのおだやかな日々が終わってしまうのではないか。もしくは自分が関わることでゲームの進行の妨げになってしまうのではないか。
本来のモブキャラなら心配する必要のないあれやこれやを、普通のモブキャラではないニコは頭の片隅から追いやることが出来ない。いかんせん今後の展開に対する知識量が違いすぎる。むしろ自分の言動が物語にどこまで影響するかだけが読めない。
所詮、モブキャラ。せっかく頂いたラッキー余生を何も思い悩まずノホホンと過ごしていれば良いはずなのだが、前世の基本ネガティブなところとクソ真面目なところが残念ながら先行してしまっていた。
(極力、主人公には会わない!本編でもちょっとしか絡みは無いし、全く出会わなくても違和感はない!うっかりフラグを立てたりぶち壊したりしないように気をつける!絶対!!)
ニコは深く心に刻みつけたのだった。




