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11:モブキャラの領分はどこまでですか?

「友達……、なのか?そんなこと改めて考えたこともないな」


リュードは元々育ちが良いせいか、食事の時の所作が美しい。レインとは真逆で、食を大事にするタイプで、半ば強引に勧めたニコ手作りのアランチーノとカンノーリなのに、口の奥で何か祈りの言葉を呟いた後、数分無言で食べきってしまった。なんだか作った方が申し訳なくなってしまう。もっとイイモン食ってくれ、と……。


「そもそも、俺とこの国で積極的に関わろうとする奴なんてお前らしかいないだろ」


あまり表立ってはいないが、上流階級がそれ以下に対して、庶民が移民に対して、差別的な感情を抱いているのは否めない。移民の根城になっている旧市街地を取り壊せという案が度々浮上するものの、具体策は挙げられぬまま今に至る。


「リュードは妹を助けてくれた恩人だからね。だから僕もチェルシーも、君のことは信頼してるよ」


「呑気すぎて危なっかしい兄妹だよな、お前らは」


レインはのんびりと2個目のアランチーノにてをのばしながら微笑んだ。

照れているのか、リュードは悪態をつく。


「リュードって良い奴が滲み出てるよね」


「確かに」


「なんだそりゃ」


ああ、ニコニコしている推しと、その言葉に照れて目を逸らす相手役。最高ですモグモグ。友達からあんなことやこんなことがあってドゥフフな展開になる未来もありうるということを、私は知っている。ドゥフフ。


「いやだからその顔やめろって。何企んでんだ……」


リュードのジト目のツッコミに、ニコはハッと我にかえる。いかんいかん、ヨダレが出るところだった。


「ところでニコ、さっきから僕達のことばかり言ってるけど……」


ギクッ。

どうにかして二人をくっつけようくっつけようしていることに感づかれたのだろうか。

レインの言葉に、ニコが一瞬身構えていると、


「僕達が友達だとしたら、ニコも友達なんじゃない?」


ね?とレインがリュードを見ると、


「いやだから男三人でさっきから何言ってるんだ寒すぎだろ……」


更に照れまくっていた。おいおい。


「僕も?……レインやリュードと友達?」


ふと、胸の奥がふわふわするような、逆にモヤモヤするような、何かつっかえたような変な気持ちになる。

私が……、「ニコ」が二人と関わっているのは謎の補整のお陰であって……二人の仲を傍で見守りたいだけであって、二人と友達になりたいわけではないというか……。

でも、今ニコは、既に二人の友達になってしまっているのだろうか。モブキャラなのに。攻略対象キャラと?

ニコはなんとも言えない感情が込み上げてきて、首を傾げた。

二人はそんなニコを照れていると勘違いしたことだろう。


(僕は今のまま、二人に関わっていいのだろうか……?)


胸の奥がザワザワする。

このまま、なんでもない日常が続けばいい。続けばいいのに……。

時は流れる。「ゲーム開始」の時間が、刻一刻と迫ってきていた。

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