10:推しカプと一緒にランチを食べよう
「行くって、どこへだ?」
「ご飯食べに。適当に、その辺」
リュードは切れ長の瞳をぱちくりさせたあと、ゆっくりと細める。
「……男三人で?」
「そうだよ。大丈夫! そこまで人通りも無いし、そんなに目立たないって」
本来なら、白い目で見られる場面かもしれないが、ここはそもそもBLゲームの世界。男同士でいる方が自然なのである。多分。
実際、男三人でピクニックしようが、周囲から奇異な目で見られたり、ツッコミが入ることはない。何やら大いなる力……BLゲーム補正がかかっているとしか思えない。
もっと言うと、明らかに華やかなイケメン(※攻略対象キャラ)二人に、残念なビジュアル(※モブキャラ)が挟まれていたら本来なら悪目立ちしまくるはずなのだ。が、今のところツッコミもヤッカミもない。安心でご都合主義な補正である。
「いや目立つだろ。それに……俺がいたら邪魔じゃないか?」
「さっきから何なの、それ。邪魔なわけないでしょ。ほら、行くよ」
半ば強引に、憮然としているリュードと、苦笑いのレインを連れたって、男三人のピクニックに繰り出した。
診療所のあるメインストリートをしばらく行くと、長方形の日陰が出来るように整えられた街路樹の並木がある。夏場は陽射しよけになるその下にはベンチとテーブルが設置されており、住民たちの憩いの場になっている。
途中の屋台でコーヒーとジュースをテイクアウトして、三人はベンチに腰を下ろした。
ニコとテーブルを挟んで向き合うようにレインが、その隣にリュードが腰掛けた。
(うーん、眼福!)
リュード×レイン。通称リューレイは、私の最推しカップリングである。どこか初々しく、お花感、百合感が漂うところがリューレイの魅力である。
意図的に働きかけて二人を隣同士に座らせて内心ニヤニヤが止まらない。他愛のない会話をしながら、推しカプの二人がモグモグタイムを眼前で繰り広げている。悦。まことに、悦。食い入るように二人を眺めながら、私ことニコは努めて普段通りを装っていた。
「なんだお前……気持ち悪い顔して」
速攻でバレた。
しかし気持ち悪いは酷い。自覚あるだけに。
「どうせ僕は二人みたいに見た目が良くないですからー」
「いや、そういう意味で言ったんじゃないだろ」
適当に誤魔化しつつ、開き直ることにした。
「だって二人があんまりにも仲良さそうだったからさ、微笑ましくて」
ニコの発言に、レインもリュードも揃って飲み物を吹き出す。ほら、仲良し。
「ちょっとニコ、突然変なこと言わないでよ」
「変じゃないよー、二人ともキャラが全く違うのに、いい友達なんだろうなーって」




