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「とりあえずセレナ。ガチャが当たらないのはバグじゃないぞ」
「だって、ホントに100回くらいガチャまわしても当たらなかったのよ」
「ガチャなんてそういう無慈悲なものなんだよ。ついでに言うとココにはガチャの中身をいじることなんてできない。ガチャは『ダリアン・オンライン』運営が用意したゲームのコンテンツなんだからな」
「よ、よくわからないけど……」
俺にさとされて冷静になったセレナはしゅんとうなだれる。
それから俺の背後に隠れたココに「ごめんなさいっ」と頭を下げて謝った。
今度はセレナが涙目になっていた。
「ううう……。アタシまた突っ走って迷惑かけちゃった……。ごめんねココ」
「ココちゃんごめんなさい。わたしも謝るから、セレナちゃんを許してあげて」
クラリーチェも頭を下げると、ココは慌てて俺の背後から出てきて「セレナさんもクラリーチェさんも悪くないですよっ」とあわあわしだした。
「ガチャってつい熱くなっちゃいますもんね。わかります、お二人の気持ち。あはは……あは……。いやホント、ガチャって人格変えちゃいますよね……」
そらした目を曇らせながら苦笑いするココから一瞬、闇が垣間見えた。
たぶん以前も似たような目に遭ったんだな。
ガチャで外れてココに八つ当たりするプレイヤーは少なくないのだろう。道具屋の店員も大変だ……。
とはいえ、これについては俺もセレナをあまり責められない。現実世界でスマホゲームに手を出したばかりの頃、レアアイテムが欲しくて電話料金合算払いで特殊通貨を購入してガチャをまわしまくった経験があるからだ。それで電話料金がとんでもない額になって両親にしこたま叱られたっけな。
「ホントにごめんなさい、ココ。無茶ぶりしちゃったわね、アタシ」
「私なら気にしてませんよ。それにセレナさん、クラリーチェさんのために『プリズムドレス』を当てようとガチャをまわしたんですよね。お友達のためにオーブを全部使うなんてすごいと思います」
「そんなの当然よ。クラリーチェはアタシの親友だもん」
「セレナちゃーんっ」
感激のあまりクラリーチェがセレナの肩にぴょんと抱きついた。
「それに関してだがセレナ。オーブ全部ガチャにつぎ込んだってのは聞き捨てならないぞ」
「別にいいじゃない。アタシのオーブなんだし。それに冒険してればまたそのうち貯まるでしょ」
「いや、ゴールドと違ってオーブはそう簡単に手に入らないんだ」
オーブは基本的に現実世界のお金で買うものとして実装されている。ゲーム内で手に入るのはほんのわずかの額しかない。
問題はお金で買うという部分だ。
オーブを買うための支払い方法としてはクレジットカードと、コンビニなどで買える電子マネーの2種類がある。俺たちはまだ高校生だからクレジットカードは使えない。そして電子マネーもゲームに閉じ込められている現状では買いにいけない。つまり現状、俺たちはオーブを買い足す方法が無いわけだ。
「セレナとクラリーチェが貯めてたオーブって、ゲームをはじめたころからクエストを攻略して少しずつ手に入れてた無料オーブだろ? それをまたやり直すんだぞ」
「た、確かにそうね……」
「じゃあ、わたしたち、もうガチャできないの……?」
「どうあがいても『プリズムドレス』のピックアップ期間中は無理だろうな」
ピックアップ期間中の目玉アイテムの排出率は3%。
それが過ぎてピックアップから外れると0.01%という、狙って当てるのはとうてい不可能な確率となり他の景品の中に埋もれてしまう。
クラリーチェにとっては残念だが諦めるしかない。




