9-10
立ちはだかるのは兵士の魔物。
西洋の兵士の甲冑で、中身に人は入っていない。鎧に魂が吹き込まれた魔物だった。
甲冑の魔物にタブレットをかざす。
ローズナイト。
それが魔物の名前だった。
「こいつがこのダンジョンのボスね」
ローズナイトが剣を垂直に構える。
セレナもそれに応じて一歩前に出て、ローズナイトと対峙し、片手剣を腰の鞘から抜く。
なんとも勇ましい花嫁だ。
「見てなさい、トキヤ。アタシがやっつけてあげるから」
「俺だって戦うさ。ダメージは与えられないだろうけど、魔物の狙いを分散させるくらいはできるはずだ」
ヒーラーのクラリーチェがいないから、セレナが無茶をしてダメージを受けてもフォローはできない。おとりになる役は必要だ。
「ここでデッドしたらクエストが台無しになるんだから、カッコつけてドジ踏まないでよねっ」
そう言うや否や、セレナが先制攻撃をしかけた。
至近距離までローズナイトに詰め寄り、片手剣の振り下ろしと振り上げの二連撃『ツインスラッシュ』を浴びせる。
セレナの素早い攻撃を胴体にくらったローズナイトは大きくのけぞり、後ろによろめく。
頭上のHPバーが1/4ほど黄色から赤色に染まる。
ローズナイトが剣を水平に構えて反撃の予備動作を見せる。
「セレナ、さがれ!」
俺の声に応じたセレナがとっさに飛びのく。
ローズナイトが真横に剣を払う。
セレナはギリギリのところでローズナイトの攻撃を回避した。だがローズナイトが間髪いれず繰り出した突きはよけきれず、右肩にダメージを受けて転倒してしまった。
セレナの頭上の黄色いHPバーが右から左へと赤色に侵食されていく。赤色は黄色を半分ほど侵食したところで止まった。
「くっ、いたたたた……」
しりもちをつくセレナに追撃を加えようと剣を振りかぶるローズナイト。
セレナの残りHPはおよそ半分。
これをモロにくらったら間違いなくデッドする。
二人の間に俺は割って入り、振り下ろされた剣を槍の柄で受け止めた。
「セレナ! だいじょうぶか!?」
「ちょっとかすっただけよ」
剣を槍の鞘で受け止めつつ、ローズナイトの足に蹴りを入れる。体勢を崩されたローズナイトはその場でよろめいて、その隙に俺はローズナイトから離れた。
剣の間合いの外から槍で突く。
しかし、レベル1に等しい俺の攻撃はローズナイトのHPを少しも減らせなかった。カンッ、カンツッ、カンッとむなしい音が鳴るだけだった。
「トドメはアタシにまかせなさいっ」
セレナが跳躍する。
ローズナイトの兜を蹴り上げてさらに空高く舞ったセレナは、空中でくるりと一回転してローズナイトの背後に着地した。
真後ろから剣を思いっきり振りかぶる。
「ハイスラーッシュ!」
フェンサーの重火力スキル『ハイスラッシュ』をローズナイトの背中にぶち込んだ。
剣を叩き込んだ瞬間、激しい火花がほとばしる。
一定確率で発生するダメージボーナス――クリティカルの演出だ!
背後攻撃によるダメージ補正とクリティカルボーナスが乗算され、セレナの渾身の一撃はローズナイトの残りのHPを0にした。
HPバーがすべて赤色になったローズナイトは膝をつき、そして光の粒子となって消滅する。
『シェダルの花園』のボスを撃破した。
「余裕だったわねっ」
セレナは前髪をかき上げる。
俺は胸をなでおろす。
「余裕……だったのか? 俺のサポートがなかったらセレナ、デッドしてたぞ」
「ふふっ、そうだったわ。ありがとね、トキヤ。アタシをかばってくれて。ちょっとだけカッコよかったわよ。ちょっとだけ、ね」
【あとがき】
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