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それから俺とセレナ、クラリーチェは拠点となる街に戻り、宿屋でHPを回復した。
宿屋には他のプレイヤーたちも何人かいて、俺たちの称号が『ドラゴンスレイヤー』になっているのに気づいた者もいた。
一人が気付くと他のプレイヤーたちも俺たちのもとへ集まってきて「ドラゴンを倒したのか!」「すげえ」「どうやって倒したのか聞かせてくれよ!」と質問攻めにしてきた。
俺とクラリーチェはたじたじであったが、セレナは身振り手振り、自慢げにドラゴン討伐の武勇伝を他のプレイヤーたちに語って聞かせた。
「……まあ、トドメはあのトキヤっていうヤツがさしてくれたんだけどね」
彼女なりの気遣いらしかった。
ほんのささやかながら、かわいげもあるのを幼馴染の俺は知っていた。
翌日、俺たちはさっそく『クエストホーム』に足を運んだ。
クエストホームではプレイヤーたちに指定されたアイテムの調達や魔物の討伐する『クエスト』を受けることができる。クエストを達成すれば資金と経験値を調達できるので、プレイヤーは常に何かしらのクエストを受けながら冒険をしているのだ。
クエストホームに入って、すぐ正面の掲示板に目をやる。
掲示板はファンタジーのRPGらしく木製の板にピンで紙きれが張り付けられているが、それはあくまでも見た目の話で、実際はタブレットでスキャンすればクエスト一覧を確認できる。
俺たち三人はタブレットを掲げ、クエスト一覧を掲示板からスキャンする。
「やっぱり! すごいわ!」
「わぁ……。クエストがいっぱいあるねぇ」
受けられるクエストはプレイヤーが所持している称号やレベルによって変わる。称号はクエストをこなしてもらえるものや、今回のドラゴンスレイヤーのように魔物を撃破したときにもらえるものなどがある。そして入手難易度の高い称号を所持しているほどさまざまなクエストを受けられるのだ。
強敵ドラゴンを撃破して『ドラゴンスレイヤー』の称号を得た俺たちのタブレットには、今まで見たことのない高難易度のクエストがずらりと並んでいた。
「さすがに『魔王討伐』のクエストは無いわね」
「セレナちゃん、魔王を倒すつもりだったの!?」
「あったりまえでしょ。アタシたちが最初に魔王を倒して、ログアウト機能を復活させるのよ」
魔王――つまりこの『ハルベリア・オンライン』のラスボスに設定されている魔物を倒すと、ゲームに閉じ込められている俺たちプレイヤーが『ログアウト』できる。
そんなウワサが流れているのだ。
あくまでウワサだ。
そのウワサが真実である証拠はどこにもない。
それでも、現実世界から切り離されてゲーム世界に閉じ込められている俺たちにできることといえば『ゲームのクリア』しかないのであった。
「それじゃあ、このクエストを受けましょ」
セレナがクエストを選択した。
「『ダークレオ』の討伐よ!」
【あとがき】
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もう一つの長編連載【精霊剣承 ~ ハズレスキル『金属召喚』で伝説の魔書を手にして最強の魔術師になったので、ケモミミメイドと銀髪ロリと共に旅立つことにした。 ~】もぜひぜひ読んでみてください。